今年6月、このNIRS所見の違いから、うつ病や双極性障害、統合失調症を、7〜8割の精度で鑑別できることが示された。群馬大学や東京大学など7施設による多施設共同研究の結果で、所見の再現性を確認した(Neuroimage. 2013 Jun 10. doi:10.1016/ j.neuroimage.2013.05.126.)。

 福田氏は、7〜8割の精度という結果について、「精神疾患の中には、経過を追って診察しないと正しい診断が下せない場合や、典型的な症状を示さない場合がある。NIRS所見の方が正しい臨床診断を見通している可能性があるだろう」と話す。

 実際これまでも、臨床症状ではうつ病と考えられたが、NIRS所見で双極性障害の所見を示し、経過を追う中で、躁状態を観察した症例の経験があるという。このような患者は、通常のうつ病治療では難治になりやすい。「NIRS所見を参考にすることで、通常のうつ病治療では十分な効果が期待できない患者をあらかじめ知ることができれば、治療方法を早期に見直すなどの対策も立てやすくなる」と、福田氏は考える。診断が難しい双極性障害の拾い上げへの貢献が期待される。

先進医療で24施設が検査を実施中
 既にNIRSは、2009年4月に精神疾患領域において初めて、先進医療の承認を得ている。承認されているのは、国際疾病分類のICD-10で統合失調症(F2)と気分障害(F3)に分類される患者が対象の「うつ症状の鑑別診断補助」だ。

 現在、先進医療として同検査を実施している医療機関は、全国で24施設(13年8月1日現在)。検査費用は、「医療機関により若干異なるが、平均1万3000円程度」(福田氏)だ。

 NIRSは近赤外光を利用しているため被曝の心配がない。また、被検者の姿勢や体動の制約が少なく、何度でも繰り返し測定できる。装置はMRIやCTに比べて比較的廉価だ。「現在、薬事承認を得ている装置の価格は数千万円だが、普及すれば、より安くなるだろう。頭部に付ける装着も改良され、小型化が進むはずだ」と福田氏は予想する。一方、測定原理に由来する制約として、時間分解能は高いが空間分解能は低く、脳の表面しか測定できない点がある。

 福田氏は、「精神疾患患者の多くにCTやMRIを実施するのは現実的に難しい。NIRSはCTやMRIほど厳密性の高い検査ではないが、外来で15分程度で測定できるので、手軽に使えるだろう」と話す。現在、臨床現場に普及している超音波検査のような利用が一つのイメージという。

 うつ症状の鑑別補助以外へのNIRSの活用法も検討されている。「低下していた脳の機能がどのように回復するかなどの病状把握や、薬剤による治療効果判定に活用できる可能性がある」と福田氏。

 高血圧が血圧の測定値を基に診断・治療されるように、初診時にNIRS検査を受けた上で治療を開始し、数カ月に1度の検査で治療効果を判定しながら、うつ病などの精神疾患を治療する─。そんな時代が、近い将来、やって来そうだ。