脳の機能を簡便に測定できる検査として、日本で機器開発が進んでいる近赤外光スペクトロスコピー(NIRS)への期待が高まっている。臨床症状や病歴からでは鑑別が難しい症例の客観的評価に加え、将来的には薬剤の効果判定などにも活用できそうだ。


群馬大学大学院医学系研究科神経精神医学教授 福田 正人氏

 「現在、精神疾患の診断は臨床症状と病歴に基づいて行われているが、近赤外光スペクトロスコピー(near-infrared spectroscopy:NIRS)を用いることで、客観的な評価が可能になる」─。NIRS研究の第一人者である群馬大学大学院医学系研究科神経精神医学教授の福田正人氏はこう語る。

脳血液量の変化から脳機能を測定
 NIRSは近赤外線を用いて、脳内ヘモグロビンの酸素化状態の変化を測定し、脳の血液量変化を基に脳機能を間接的に計測する手法。NIRSを利用した検査は、光トポグラフィーと呼ばれる。ヘモグロビンの酸素化の状態に応じて、光の吸収が波長により異なることを利用している。NIRSは日本で機器開発が進んでいる技術で、精神疾患への応用研究では、日本が世界をリードしている。

 NIRS検査では、何らかの課題を被検者に求めた際の脳活動の変化を測定する(写真1)。うつ症状の鑑別では、特定の頭文字で始まる単語をできる限り多く発話するよう求める「言語流ちょう性課題」を課して測定するのが一般的だ。

写真1●NIRS検査のイメージ
近赤外光を送受光するプローブを頭部に装着し、座位で検査を受ける。

 うつ症状の診断は、主に前頭葉のNIRS所見(図1)を基に行う。同じ症状を示す患者でも、うつ病や統合失調症、双極性障害では、脳血液量の変化が異なっている(図2)。

図1●うつ症状を示す精神疾患患者の前頭葉におけるNIRS所見(図2とも福田氏による)
言語流ちょう性課題実施中(10〜70秒間)のヘモグロビンの変化は、各精神疾患で特徴的な波形を示す。

図2●各精神疾患患者のNIRSによるトポグラフィー画像
健常者では脳血液量が早期から増加(赤色化)するが、精神疾患患者では賦活が低下していて、青色が残り、そのパターンは疾患ごとに異なる。
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