カナダKaiser Permanente Division of ResearchのRachel Whitmer氏

メトホルミンで認知症リスクが下がる
 癌とは対照的に、AD発症リスクが50%も上昇するとされるのが糖尿病だ。今回、2型糖尿病患者のコホート研究で、メトホルミン投与は他の糖尿病治療薬よりも認知症にかかるリスクを軽減することが示された。カナダKaiser Permanente Division of ResearchのRachel Whitmer氏らが発表した。

 研究の対象は、Kaiser Permanente Diabetes Registryに登録された2型糖尿病患者のうち、1999年から2001年の間に糖尿病の単独療法を開始した1万4891人(平均年齢は55歳)。

 処方の内訳は、メトホルミン単独療法が8528人と過半数を占め、次いでSU薬が3363人、チアゾリジン薬(TZD)が2095人、インスリンが905人だった。5年間の追跡中に、1487人が認知症と診断された。

 治療薬別に5年間の認知症発症リスクを解析したところ(表2)、メトホルミンの発症リスクを1とした場合、SU薬のHRは1.24、TZDは1.18と、いずれもメトホルミンに比べてAD発症リスクは有意に高かった(年齢、人種、学歴、罹病期間で補正後)。インスリンについては、さらにHbA1cの補正を加えたところ、AD発症リスクはメトホルミンに比べて有意に高かった(HR1.28)。

表2●糖尿病治療薬の種類別に見たアルツハイマー病発症リスク(Whitmer氏による)

 Whitmer氏は、「メトホルミンで治療を開始した患者は、他の薬に比べて認知症発症リスクが低いことが示された。インスリンの効きを改善する薬が認知機能にも良い影響を与えている可能性がある」と語った。

退職年齢と認知症リスクの関連も
 生涯にわたり脳に知的刺激を与えることが、認知症予防に役立つとの説がある。そこで、退職する年齢が認知症リスクを高めるかどうかを検討したところ、退職年齢が高いほど認知症リスクが減少することが示された。フランスのBordeaux School of Public Health(ISPED)のCarole Dufouil氏らが発表した。

 対象は、自営業(小売店主、工芸作業者)で、2010年12月31日の時点で既に退職して生存している42万9803人。退職からの平均年数は12年超だった。このうち、1万1397人(2.65%)が認知症を患っていた。

 Cox比例ハザードモデルを用いて解析を行ったところ、退職時の年齢が1歳上がるごとに認知症リスクは3.2%減少した(HR 0.968、95%信頼区間 0.962-0.973)。

 この研究の結果では、高齢まで仕事を続けるほど認知症リスクが軽減されることが示された。Dufouil氏は、「今回、『脳は使わなければ駄目になる』という説を裏づける結果が得られた。仕事に携わることは脳のトレーニング、社会性の維持につながり、結果的に認知症リスクが軽減されるのではないか」と考察した。