【 福島県南相馬市 】
日常生活の活発化を狙い、住民の生きがいづくりを模索

 津波被害だけでなく、福島第1原子力発電所の事故による放射線被曝の影響も懸念される南相馬市。南相馬市立総合病院(230床)は震災後、在宅診療や初期研修医の受け入れを始めた。その他の病院も多くが規模を縮小して再開している。

「日常生活でいかに体を動かしてもらうかが課題となっている」と、南相馬市立総合病院の原澤慶太郎氏は言う。

 ただ、「震災で仕事や知人を失い食生活が変化した結果、生活スタイルが変わり体重が増えている住民が目立っている」と、亀田総合病院(千葉県鴨川市、925床)から南相馬市立総合病院に出向している原澤慶太郎氏は指摘する。さらに、もともと広い一軒家に住んでいた被災者が狭い仮設住宅に移り住み、住宅内での活動量も低下しているという。

 そこで原澤氏らは、被災した住民の仮設住宅への入居が始まった頃から集会所で健康教室や折り紙サークルを開催してきた。高齢者に生きがいを持って活発的に日常生活を送ってもらおうという狙いだ。作られた折り紙を販売し、その収益を地元の子どもたちへの支援活動に充てる仕組みも整えた。

男性向けの木工教室も創設
 しかし、場を与えればスムーズに社会に溶け込む女性と違い、男性は健康教室などにあまり参加してくれない。考えた結果、今年1月に立ち上げたのが「男の木工教室」だった。

 仮設住宅や借り上げ住宅に住む男性を主な参加対象とし、毎週日曜日に開催。地元の全国建設労働組合総連合の組合員の指導の下、木工品を製作している。さらに、参加者同士のコミュニケーションを促すため、各参加者の名刺も作成した。

 「男性はコミュニティーの中での役割を自覚すれば活動的になる」と原澤氏は話す。市役所のベンチや学校のプランターといった市内の需要を掘り起こし、それに合った木工品を作るシステムも取り入れた。現在の参加者は十数人。今後は前述の折り紙と同様、木工品を販売して収益につなげる仕組みをつくりたい考えだ。

 実は原澤氏が被災者の作品を販売して収益を上げる仕組みにこだわる背景には、こうした活動を一過性に終わらせたくないという思いがある。「補助金などで運営する手もあるだろうが、打ち切られればその事業がしぼんでいくのは目に見える。その点、自力で収益を上げられれば活動は持続し、参加者の生きがいも保てる」と原澤氏。こうした仕組みが実を結べば、高齢化の進む各地域のモデルとなるのは確かだ。

左上)毎週日曜日に開かれている「男の木工教室」。仮設住宅などに住む男性が主な対象(提供:原澤氏)。
左下)仮設住宅の集会所では、運動機能を維持するために頻繁に健康教室などが開かれている。
右)仮設住宅に併設された折り紙作業所。女性高齢者などが折った折り紙作品が数多く飾られている。