東日本大震災の発生から2年半が経過した。被災地が徐々に復興し始める一方で、被災した高齢者に生活不活発病や脳卒中などの発症が目立ってきている。
各被災地では被災高齢者の健康管理が喫緊の課題となっている。


「震災から2年以上がたち、不活発な生活に陥っている被災者が増えている」と語る東北大の辻一郎氏。

 「仮設住宅や借り上げ住宅に移り住んだが、震災で仕事を失い家族や知人と離ればなれになり、何をしてよいのか分からなくなっている高齢の被災者は多い。結果、家で一日を過ごす高齢者が増加傾向にある」

 東北大大学院医学系研究科公衆衛生学分野の教授である辻一郎氏のグループは東日本大震災が発生した2011年の夏から、被災者の健康状態などを定期的に調査してきた。辻氏はこの調査活動を踏まえて、被災高齢者の生活状況をこう語る。

要介護手前の高齢者が急増
 同氏らは宮城県石巻市の雄勝・牡鹿地区で、11年の夏と秋冬、12年の夏と冬、13年の夏の計5回、被災高齢者の生活機能の状態を調べた。要支援・要介護状態ではないが、その恐れがある人を「特定高齢者」と呼ぶが、その選定の際に自治体が使う生活機能評価の基本チェックリストを用い、生活機能全般や運動機能、栄養状態、口腔機能が低下している人の割合を調査。結果、調査を重ねるたびに各機能は悪化する傾向にあることが分かった(図1)。さらに、特定高齢者に該当する人の割合は、11年夏の調査では28.6%だったが、13年夏には46.5%に跳ね上がった(図2)。被災高齢者の半数近くが近い将来、要支援・要介護状態に陥るリスクを抱えているわけだ。

図1 宮城県石巻市雄勝・牡鹿地区における高齢者の生活機能や運動機能などの低下状態

図2 宮城県石巻市雄勝・牡鹿地区の高齢者の中で特定高齢者に該当する人の割合

 被災高齢者の生活機能の悪化は、冒頭の辻氏のコメントにある通り、震災による生活環境の変化が影響している。被災高齢者の屋外歩行状況の同氏の調査では、11年夏には「遠くへも1人で歩いている」と回答した割合は71.6%だったが、13年夏には48.2%に急減した。

 「調査地域の人たちは生涯現役で過ごすのが一般的だった。それが震災で壊されて生きがいもなくし、生活不活発病になる高齢者が目立ってきている。この状態が続けば高血圧や糖尿病といった生活習慣病の発症や悪化を助長し、循環器疾患などの増加を招きかねない」と辻氏は警鐘を鳴らす。実際、こうした傾向が既に出始めている地域もある。