すなわち、IGRA陽性のみの高齢者は、今回の指針では治療の対象とはなっていない。加藤氏は、「高齢者をむやみに治療するのは避けるべき」と強調する。高齢になるほど、抗結核薬による副作用が発生しやすいことが知られており、副作用のリスクと治療による発病予防のベネフィットのバランスを考えた上で、治療するかどうかを決める必要があるためだ。

 ただし、慢性腎不全による血液透析や生物学的製剤を使用する際には、LTBI治療を検討する必要性が明記されている。また、発病リスクが4未満でも、複数のリスク因子を重複して有する場合は、治療の検討が必要になることも注意したい。例えば、胃切除後で低体重の患者などでは発病リスクが高まる。

 IGRA陽性者に対して、副作用の懸念などから予防的な治療が実施できない場合でも、発病リスクを把握できていれば、「長引く咳や微熱、体重減少が生じた際には早期に結核を疑った対策を取れるようになる」と原田氏。結核は早期に診断できれば、非感染性の状態で治療できる。早期診断・早期治療により、集団感染も予防できる。

米国では短期間のレジメンを推奨
 今回の指針は、LTBI治療は、原則としてイソニアジド(商品名イスコチン他)の6カ月間または9カ月間の内服とした。

 イソニアジドが副作用などで使用できない場合は、リファンピシン(リファジン他)を4カ月間または6カ月間投与が選択肢となっている。

 しかし、発症前の患者に長期間の服用を強いても、病気の自覚は薄く、コンプライアンスが維持できないのではないかとの危惧が専門医や保健所スタッフから上がっている。服薬コンプライアンスの低下は、治療効果を下げるだけでなく、結核菌の薬剤耐性化を招きかねない。

 米国では、より短期間のLTBI治療のレジメンが開発され、米疾病対策センター(CDC)から推奨されている。これは、高用量イソニアジドにrifapentine(国内未承認)を併用し、週1回服用を3カ月継続するもの。12回の服用で済むことから、患者の利便性は高く、良好なコンプライアンスが期待できる。また、このレジメンの直接服薬確認下による服薬は、自己管理によるイソニアジドの服薬と同等の発病予防効果が確認されている。

 治療期間だけでなく、より効果の高いLTBI治療薬も望まれる。現在の標準的な治療レジメンによる、結核の発病予防効果は6〜7割程度といわれており、LTBI治療を受けた後でも、一部の患者は結核を発症し得る。今後、より短期間でLTBI治療が可能で、さらに結核発病の予防効果が高いLTBI治療薬の開発・実用化が望まれる。