依然として結核中蔓延国とされる日本。結核患者の大半は、若年時に感染し、加齢や基礎疾患の影響で発病する高齢者だ。既感染者は潜在性結核感染症(LTBI)として、発病リスクに合わせた積極的な対策が必要となる。


 国内における新規結核患者数は減少し続けており、2001年の3万5489人から11年は6割強の2万2681人になった。しかし、11年の結核罹患率(人口10万人に対する新規結核患者数)は17.7と、米国の4.3倍、カナダの3.8倍。世界的には依然、日本は結核中蔓延国だ。

 現在の結核患者の大半は高齢者だ。11年の結核患者の5割以上を70歳以上の患者が、3割以上を80歳以上の患者が占めている(図1)。

患者の大半は数十年前の感染者
 高齢の結核患者の大半は結核菌の既感染者だ。若年時に感染した結核菌が休眠状態のまま体内に残り何十年も経たのちに、糖尿病や癌、腎不全などの基礎疾患の治療や、加齢に伴う細胞性免疫の低下により再活性化して、結核を発症する。

 「免疫が低下した高齢者では一定の割合で結核が生じることは分かり切ったことなのに、結核患者が生じるたびに、驚き慌てている」。結核の専門家は、一般医療機関における結核への対応をこう表現する。

 このような高齢者における結核発病リスクの判断にインターフェロンγ(IFNγ)遊離試験(IGRA)が有用だ。IGRAは結核菌感染の判断に加え、既感染者における再発リスクの有無の判断に役立つ可能性が示されている。

 推定既感染率が70〜80%と高い80歳代を対象にしたクォンティフェロンTBゴールド(以下、QFT)を用いた検査の結果、陽性率は2〜3割程度にとどまるとの結果が得られている(Mori T. et al, Int J Tuberc Lung Dis. 2007;11:1021-5.)。既感染者の全てが、同検査で陽性とはならなかったのだ。

免疫診断研究所の原田登之氏は、高齢者施設などの入所時のベースライン検査としてIGRAを勧める。

 結核予防会結核研究所技術顧問で、免疫診断研究所(東京都立川市)所長の原田登之氏は、「IGRA陰性者では、結核菌が休眠状態なのか、体内の結核菌が全てなくなっているのかは分からないが、再発リスクはまずないと考えられる」と話す。

 高齢患者が多い結核だが、高齢者全員が再発リスクを有するわけではない。原田氏は、「IGRA陽性者に限定して、結核対策を実施すれば、高齢者の結核にも先手を打って対応できる」と言う。IGRA活用法として、高齢者施設などの入所時にベースライン検査としてIGRAを行い、入所者の結核発病リスクを把握することを勧める。個々の患者に対してIGRAを実施することで、それぞれの結核発病リスクを把握でき、発病リスクに応じた結核対策が可能になってきているのだ。