加齢黄斑変性には抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法が導入され、ルセンティス(一般名ラニビズマブ)が大きな役割を果たしている。網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫や病的近視における脈絡膜新生血管にもこのほど待望の効能追加となった。同剤登場の意義を滋賀医大眼科学講座教授の大路正人氏に聞いた。


大路 正人氏
1983年阪大卒。米国ピッツバーグ大学、阪大助教授を経て、2005年から現職。網膜硝子体疾患を専門とし、網膜硝子体手術の術式などの開発に取り組んでいる。

 加齢黄斑変性(AMD)は、加齢とともに眼の網膜中心部の黄斑に異常を来し、視力障害を起こす疾患である。高齢者の失明(社会的失明)の一因となるもので、近年、増加傾向にある。

視力を改善する抗VEGF薬
 AMDは、網膜色素上皮が萎縮する「萎縮型」と脈絡膜から新生血管が発生して滲出や出血を起こす「滲出型」に分けられ、萎縮型には現在も治療法がないが、滲出型には脈絡膜新生血管(CNV)を標的とした手術やレーザー光凝固術などが試みられてきた。

 2003年に承認された光線力学的療法(PDT)は、光感受性物質ベルテポルフィンを静注してCNVに取り込ませ、レーザー光を照射してCNVを閉塞させる治療法で、AMDの視力低下を防ぎ、視力を維持することができるようになった。

 さらに新しい治療法として開発され、現在、第一選択となっているのが抗VEGF療法である。CNVの発生には眼のVEGFが関与している。そのため、VEGFの働きを抑える薬剤を硝子体内注射してCNVを抑制し、AMDを治療する。わが国では08年10月にペガプタニブ、09年3月にラニビズマブが発売され、抗VEGF療法時代が始まった。

 ラニビズマブは、癌領域の抗VEGF薬として使われていたベバシズマブを基に、眼科用に開発された抗VEGF薬である。VEGFに対するヒト化モノクローナル抗体の一部分(Fab断片)を使い、VEGFに対する親和性を増強して製剤化したもので、VEGFと結合してその作用を阻害し、CNVの形成や血管透過性を強力に抑える。

 国内臨床試験では、ラニビズマブ0.5mg月1回の毎月投与で12カ月にわたり、視力維持にとどまらず、AMDに対して初めて平均視力の改善が認められた。「3回の投与で視力が向上し、それが維持され、さらに改善していく。AMDで視力の改善が得られたことは非常に大きかったと思う」と大路氏は指摘する。

 しかし、硝子体内注射を毎月続けていくのは負担が大きい。そのため、さらに臨床試験が重ねられ、ラニビズマブの投与は3回の連続投与後、維持期は定期診察を続け、悪化した場合に再投与するPRN(pro re nata;適宜投与)で行われている。

 滋賀医大でのAMDに対するラニビズマブ治療の1年成績(68例)では、視力が投与前0.21から投与6カ月後0.28、12カ月後0.26と有意な視力改善が認められたという。

 12年11月にはアフリベルセプトが発売され、AMDに対する抗VEGF薬は3剤となった。現在では抗VEGF薬がAMD治療の第一選択薬となっている。