川島 眞氏
東京女子医大 皮膚科学教室 教授

 癌治療に使われるEGFR-TKIや抗EGFR抗体薬は、癌細胞に過剰発現しているEGFRを阻害することで癌細胞の増殖を抑制する分子標的薬である。しかし、EGFRは皮膚や毛包、爪においてもその増殖や分化に深く関与しているため、これが阻害されることで皮膚掻痒症、挫瘡様皮疹、爪周炎などの副作用が発現する。

既に皮膚科医は皮膚障害を診療
 東京女子医大皮膚科学教室教授の川島眞氏は、分子標的薬による癌治療に伴う皮膚障害の診療実態と今後の課題を検討するため、皮膚科医を対象としたインターネット調査を行った。

 その結果、分子標的薬による皮膚障害に対して、既に多くの皮膚科医が主体的に取り組んでいる実態が明らかになった(図1)。

 その一方で今後の課題は「癌患者の治療を支援する観点から、皮膚障害に対する有効な治療の確立、癌診療科・施設との確かな連携、さらに皮膚科医が自らの役割を認識して研鑽を重ねることである」と川島氏は語る。

治療方針の確立が最重要課題
 分子標的薬による皮膚障害の治療に関しては、幾つかの癌治療専門施設から治療アルゴリズムが公表されているが、「今回の調査では半数以上が『参考にする治療アルゴリズムはない』、あるいは『知らない/分からない』、と答えている」と川島氏は指摘する。

 例えば、EGFR阻害薬で発現する挫瘡様皮疹は細菌感染を伴わない炎症性皮疹であるため、通常の尋常性挫瘡とは異なり、抗炎症作用の強いステロイド外用薬、抗炎症作用を期待したテトラサイクリン系抗生物質の内服、および保湿剤を併用することを推奨する治療アルゴリズムが複数ある。しかし、通常の尋常性挫瘡に用いる抗菌外用薬を主に選択するとの回答も一定数あり、特に開業医においては75.8%と高率であった。この点について川島氏は「挫瘡様皮疹でも重症例で2次感染を起こしているケースでは抗菌外用薬が適応となるが、この回答からは挫瘡様皮疹と尋常性挫瘡との混同が推測される。従って、分子標的薬に伴う皮膚障害の病態の理解や治療アルゴリズムの確立に努め、コンセンサスを得ることが重要である」と説明する。

 癌診療科・施設との連携については、「この皮膚障害は通常の薬疹とは異なり、原因となる薬を中止することはできない。その点を皮膚科医がよく理解して、皮膚科医と癌治療医がともに患者を支えることがとても大切である」と指摘。単に癌治療医と皮膚科医が連携するのではなく、患者を頂点とした三角形の底辺を癌治療医と皮膚科医が支える構造をつくることが今後の課題と強調している。