塚崎 邦弘氏
国立がん研究センター東病院 血液腫瘍科 科長

 わが国において慢性リンパ性白血病(CLL)は全白血病の1〜3%と、まれな疾患である。一方、欧米では全白血病の20〜30%と頻度が高い。この差については、ハワイ在住の日系人では消化器癌が欧米人と同様なのにCLLはまれであることから、生活習慣ではなく遺伝的素因によって、アジアでは頻度が低くなっていると考えられている。

 小児において発症することは皆無であり、30歳代以降、特に高齢者での罹患例が多いことが特徴である。「進行が比較的緩徐な疾患であるが、現在の治療法では治癒が困難であるため、症状の軽減とQOL維持を目標として、より長期に治療管理することが重要な疾患である」と、国立がん研究センター東病院血液腫瘍科科長の塚崎邦弘氏は説明する。

症状出現と進行に基づく治療
 CLLは大半が健診や1次診療における血液検査で白血球増多から発見され、無症状であることが多い。

 「このことは、より進行した病期で発見される例が少なく、早期発見例が多いことを意味している」と塚崎氏は指摘する。

 CLLの病期の判定は血球減少と臓器腫大によるRai分類やBinet分類に基づくが、いずれも低リスクの早期例に対しては慎重な経過観察が推奨されている。「これは、CLLは進行が緩徐な疾患であることと、現状では若年者に対する同種造血幹細胞移植療法以外に治癒が期待できる有効な治療手段がないことが主な理由である」と塚崎氏は説明する。高齢での発症が多く、無治療で経過する例も少なくないため、早期から過酷な治療を施行してQOLを低下させることは避けなくてはならない。

 経過観察中に症状が出現した場合は、治療を考慮する。具体的には、貧血や血小板減少は化学療法が有効であるため治療開始の理由となる。その他に、併発症としての感染症や、リンパ節、肝臓、脾臓の腫大による隣接の臓器障害があれば治療を開始する。また、一定期間ごとの血液検査で白血球数の倍化時間が1年未満である場合には、無症状でも治療開始する。一方、1回の検査で白血球数が多いことを理由に治療を開始することは原則的にない。

 初回治療の選択は、患者の年齢や、CLL以外の疾患の有無などから期待できる生存期間、FISH解析から示される染色体異常、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の有無などに基づくことになる(図1)。

(*クリックすると拡大表示します)