近年増え続けるうつ病などの精神疾患への対策として、厚生労働省は医療計画上重点を置く癌、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病の4大疾病に精神疾患を加えて5大疾患とし、本年度から多くの都道府県で医療計画が作成されている。

副作用を考慮した薬剤選択
 軽症・中等症のうつ病患者は、かかりつけ医が治療しているケースが多い。こうした患者に対する薬物療法について慶應大精神・神経科学教室専任講師の内田裕之氏は「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)あるいはセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)から1剤選んで単剤療法を行う。ただし、どの薬剤が初期治療に最も適しているかというコンセンサスは十分に得られていない」と述べる。

 SSRIとSNRIでは薬理特性が異なり、同じSSRIでも有用性と忍容性は異なる。そこで内田氏は「副作用を考慮して使い分けている」と話す。具体的には、比較的副作用の少ないSSRIの中でも、エスシタロプラムやセルトラリンは副作用がさらに少ないので、「この2剤は非専門医でも比較的安心して使える」と内田氏は指摘する。一方、悪心・嘔吐や下痢、便秘といった副作用が強く出て食欲が低下する患者には、ノルアドレナリン・セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)を考慮するが、「NaSSAは翌日に眠気が残ることが少なくないので、高齢者や働いている人には慎重に使った方がよい」(内田氏)。

早期に最大用量投与を目指す
 うつ病に対する薬物療法の基本は、1種類のSSRIあるいはSNRIを十分量投与することで、そのためには「効果と副作用を勘案しながら、できるだけ早く最大用量まで増量することがポイントになる」と内田氏は指摘する。具体的には、治療開始2週目には最大用量を服用できるように増量し、4週目に治療効果を判定する。一方、副作用が強い場合は1週目でもすぐに他剤に切り替える。入院治療の場合は治療開始2週目でも効果判定が可能だが、外来では最大用量投与後2週目に改善が見られない場合は、他の薬剤に切り替える。「効果が不十分なのに漫然と同じ薬剤を投与し続けることが最も良くない」と内田氏。改善効果が見られた場合は「初発の場合は6〜8カ月間、既に2回以上うつ病エピソードのある患者は2〜3年間、急性期に使用した用量を投与し続ける」と治療期間について解説する。

 うつ病治療に当たって非専門医が注意すべき点について内田氏は「まず、抗うつ薬の投与前に過去に躁状態がなかったかを確認することが重要。また、抗うつ薬を2種類以上併用しても予期しない副作用が増える恐れがあり、常に単剤療法を基本とする。さらに、ベンゾジアゼピン(BZ)系の抗不安薬がよく使われているが、うつ病の本質的な改善は望めず依存が生じる場合もあるので、漫然とBZ系の薬剤を処方するのは避ける」と指摘。過去に躁状態が見られた患者や、最大用量を2週間投与しても改善が全く見られない患者は、専門医に紹介してほしいと語っている。