耐糖能異常(IGT)を有する日本人にピタバスタチンを投与しても、糖尿病発症の増加は認められなかった。これはJ−PREDICTの結果で、東京医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科の小田原雅人氏が研究グループを代表して発表した。

 スタチンと糖尿病発症の関連については、これまで一貫した結果が得られていない。しかし、糖尿病の発症を主要評価項目として前向きに評価したデータはなく、さらに研究ごとに糖尿病の診断基準が異なっていた。そこで、オープンラベルの多施設共同無作為化比較試験を実施し、前向きに検討した。

 対象はLDLコレステロールが100〜159mg/dLかつ/または総コレステロールが180〜239mg/dLであり、WHO基準によるIGT患者(食後2時間血糖値が140〜199mg/dLかつ空腹時血糖値が126mg/dL未満)の1269例。

 生活習慣の改善に加えピタバスタチン1〜2mg/日を投与する群(ピタバスタチン群、634例)と、生活習慣の改善のみを行う群(コントロール群、635例)に無作為に割り付けた。試験は、2006年4月から12年3月まで行われた(登録は10年3月まで)。

 患者背景を見ると、年齢、男女比、BMI、喫煙率、血圧値、各種脂質値、食後2時間血糖値、HbA1c、空腹時・食後2時間インスリン値、併用薬には差はなかった。しかし、空腹時血糖値のみ有意な差が認められた(ピタバスタチン群103.4mg/dL、コントロール群104.9mg/dL、P=0.02)。

 主要評価項目は糖尿病の累積発症率とし、糖尿病の定義は、食後2時間血糖値が200mg/dL以上、あるいは空腹時血糖値が126mg/dL以上が1回でも認められたときとした。

 その結果、糖尿病に進展したのはピタバスタチン群が213例(163件/1000人・年)、コントロール群が254例(186件/1000人・年)だった。事前に規定されていた5つの因子(性別、年齢、BMI、食後2時間血糖値、高血圧の有無)で調整したところ、ハザード比は0.82(95%信頼区間0.68−0.99、P=0.041)で、ピタバスタチン群の方が18%、有意に低かった。

 サブグループ解析を行ったところ、ベースラインにおける高血圧の有無のみ、有意な交互作用が認められた。ハザード比は高血圧群が1.09(0.83−1.42)、非高血圧群が0.69(0.54−0.89)だった。

 副次評価項目も糖尿病の累積発症率としたが、糖尿病の定義には主要評価項目と異なる定義を用いた。空腹時血糖値が126mg/dL以上に1回でも上昇、空腹時血糖値が126mg/dL以上に少なくとも2回上昇、2時間血糖値が200mg/dL以上に1回でも上昇、2時間血糖値が200mg/dL以上に少なくとも2回上昇、1999年の日本糖尿病学会の基準、2010年の日本糖尿病学会の基準といった定義で検討したが、いずれでも糖尿病発症の有意な増加は認められなかった。

 代謝パラメータを見ると、LDLコレステロールとトリグリセライドはピタバスタチン群で有意に低かったが、HDLコレステロール、空腹時血糖値、食後2時間血糖値、HbA1cは差がなかった。体重は両群とも同程度減少していた。

 有害事象の全発生率はピタバスタチン群が26.8%、コントロール群が25.6%で差はなかった。筋肉痛はピタバスタチン群で多かったが、クレアチニンキナーゼの500 IU/L以上への上昇は同程度だった。なお、横紋筋融解症は両群ともなかった。

 以上から小田原氏は、「IGTを伴う日本人患者において、糖尿病をどのように定義しても、ピタバスタチン投与と糖尿病発症の増加は関連していなかった。これまでスタチンは、糖尿病リスクをわずかに高めるが、心血管イベント抑制のメリットが上回るので投与すべきという理解で用いられてきた。しかし、今回の結果を踏まえると、スタチンが糖尿病発症リスクの上昇をもたらすかについて、再検討する必要があるかもしれない」と語った。