約1万3000例を6年超にわたって追跡したところ、インスリングラルギンを長期間投与しても、癌罹患リスクには特に影響を及ぼさないことが分かった。これはORIGIN試験のサブ解析結果で、カナダMcMaster UniversityのLouise Bordeleau氏が報告した。

 同試験は、グラルギンによるインスリン療法やω3脂肪酸の投与によって、心血管(CV)イベントや死亡が減少するかを検討するために行われた2×2 factorialデザインの多施設共同国際無作為化比較試験。今回報告されたのは、グラルギンの継続的な使用が癌リスクに与える影響を検討した結果だ。

 患者の組み入れは2003年9月から05年12月までに40カ国で行い、癌に罹患しておらずCVイベントリスクが高い空腹時血糖異常(IFG)、耐糖能異常(IGT)、早期2型糖尿病の計1万2537例を登録した。患者背景は、平均年齢が63.5歳、女性比率が35%、糖尿病既往が82%を占め、その平均罹病期間は5.4年だった。癌イベントの判定は、盲検の判定者によって行われた。

 6.2年間(中央値)の追跡期間中に、癌イベントが953例(7.6%)で認められ、発生頻度は1.32/100人・年だった。Cox回帰モデルを用い、グラルギン投与群の非投与群に対する調整ハザード比を求めたところ、全ての癌死亡は0.94(95%信頼区間0.77−1.15、P=0.52)、全ての癌罹患は1.00(0.88−1.13、P=0.97)だった。

 癌の種別に見ると、肺癌は1.21(0.87−1.67、P=0.27)、大腸癌は1.09(0.79−1.51、P=0.61)、乳癌は1.01(0.60−1.71、P=0.95)、前立腺癌は0.94(0.70−1.26、P=0.70)、メラノーマは0.88(0.44−1.75、P=0.71)で、いずれの癌においても差は認められなかった。

 癌を発症した患者群(953例)と発症しなかった患者群(1万1584例)でベースラインの背景を比較したところ、癌患者群は非患者群に比べ、平均年齢が高い(66.1歳 対 63.3歳、P<0.001)、喫煙率が高い(14.9% 対 12.2%、P=0.014)、アルコールを週に2単位超摂取する人が多い(30.2% 対 22.1%、P<0.001)、CVイベント既往率が高い(64.3% 対 58.4%、P<0.001)、糖尿病既往例が少ない(79.4% 対 82.6%、P=0.015)、SU薬服用率は低い(24.3% 対 30.0%、P<0.001)といった特徴があった。一方、メトホルミン服用率(27.6% 対 27.4%、P=0.89)、その投与量(1353.1mg/日 対 1358.9mg/日、P=0.88)は差がなかった。

 Bordeleau氏は今回の検討の強みとして、大規模な前向きの無作為化比較試験で6.2年間の追跡を完了したこと、癌イベント発生数の多さに加えて癌アウトカムを盲検で評価していることを挙げた。一方、癌腫によっては発症率が低かったこと、血糖値正常群が設定されていなかったことなどが限界点とした。その上で同氏は、「グラルギンの長期にわたる使用は、全ての癌イベント、新規の癌発症などに影響を与えなかった。また、癌イベントはメトホルミンやSU薬、試験期間中のHbA1c、体重による影響を受けなかった」とまとめた。