2型糖尿病患者では骨密度が維持されているのに骨折リスクが高い。高血糖による終末糖化産物の増加などが骨質を劣化させ、骨の脆弱性をもたらすためとされる。糖尿病治療薬も種類により、骨代謝への作用は異なるという。


島根大学内科学第一教授の杉本利嗣氏

 「糖尿病患者では骨密度が維持されているため、合併症としての骨粗鬆症への関心は低かった。しかし近年、糖尿病では骨折リスクが高いことを示す知見が集まりつつある」。島根大学内科学第一教授の杉本利嗣氏は、こう述べる。

 同氏らは2009年に、日本人2型糖尿病患者と非糖尿病患者を比較した研究結果を報告。2型糖尿病患者では骨密度が対照群より有意に高値でありながら、椎体骨折リスクは糖尿病群で有意に高いことを示した。

 「現在では、2型糖尿病における骨脆弱性の主な要因は骨質の劣化であることが世界的なコンセンサスになっている」(杉本氏)という。中でも注目すべきはコラーゲンの劣化だ。

 コラーゲン同士を結合させている架橋には、酵素依存的な「生理的架橋」と高血糖により増加したペントシジンなどの終末糖化産物(AGEs)が形成する「AGEs架橋」があり、後者の増加が骨強度を低下させるという。

 高血糖はAGEsの産生を亢進させ、高血糖とAGEs増加はAGEs受容体であるRAGEの発現も促進する。AGEsは受容体であるRAGEを介して骨芽細胞の分化を抑制する。

 一方、RAGEの細胞外成分であるesRAGEはAGEs-RAGEのシグナル伝達を阻害するので、esRAGE/ペントシジン比の低値は骨脆弱性のマーカーになり得る。実際、杉本氏らは2型糖尿病患者で、esRAGE/ペントシジン比が低いほど椎骨骨折リスクが高いことを報告している。

 また、同氏らは、2型糖尿病群では健常群に比べ、副甲状腺ホルモン(PTH)と骨芽細胞分化の指標であるオステオカルシンの血中濃度が有意に低いことも明らかにした。

 さらにPTHとオステオカルシンがともに低値の群では、両指標がともに高値の群に比べて椎体骨折リスクが有意に高く、2型糖尿病では、PTH低下を伴う骨代謝回転の低下と骨形成の低下が骨の脆弱性に関わっていることが示唆された(図1)。

図1●糖尿病における骨脆弱性亢進の機序(杉本氏による)

 2型糖尿病に関連した骨粗鬆症では骨密度低下が少ないため、FRAXのような評価指標を用いると、リスクを過小評価しかねない。このため杉本氏らは、生活習慣病の骨折リスクを反映させた脆弱性骨折予防のための薬物治療開始基準を提案しているという。

 なお、インクレチン関連薬は骨代謝に好影響を、チアゾリジン薬は悪影響を与える可能性が示唆されている。今後は糖尿病の薬物治療においても、骨折リスクへの配慮が必要になりそうだ。