一方、過去の報告において糖尿病患者での罹患リスク上昇が指摘されていた乳癌(1.03、0.69-1.56)、罹患リスク減少が指摘されていた前立腺癌(0.96、0.64-1.43)は、どちらも有意な変動は認められなかった。

 今回の解析結果について津金氏は、「33万人という大規模な日本人の集団を対象とした検討から、多くの癌で、国内外におけるこれまでの報告と同様の傾向を確認できた」と評価する。

 前立腺癌や乳癌では既報と異なる結果となったが、これらの癌は日本人の罹患率が低く検出力に限界があったほか、大豆製品などから摂取したイソフラボンによる抗エストロゲン作用や肥満者の割合の少なさなどが影響した可能性が考えられるという。

生活習慣見直しで癌リスク減少
 従来から糖尿病の発症や進展に関わる危険因子として、加齢、肥満、不適切な食事や運動不足などが指摘されていた。今回の報告書では、これらが癌の危険因子でもあるとし、健康的な食事、運動、体重コントロール、禁煙、節酒などが両疾患のリスク減少につながるとして推奨した(表2)。

表2●日本糖尿病学会と日本癌学会の合同委員会による医師・医療者への提言(報告書より抜粋)

 さらに、糖尿病患者は性別・年齢に応じて適切に癌のスクリーニング検査を受けることを勧めており、厚生労働省による「科学的根拠に基づくがん検診」の内容に基づいて受診するよう求めた(表3)。例えば大腸癌では、40歳以上の男女を対象に、年1回の間隔で問診と便潜血検査を行う。また、肝炎ウイルス陽性の場合は、肝臓癌のスクリーニング検査を受けるよう勧めている。

表3●合同委員会が提言した癌種別の検診内容(報告書より)

 「糖尿病治療において虚血性心疾患のリスクは認識されるようになったが、実際は癌で死亡する患者の方が多い。生活習慣の見直しや定期的な癌検診の勧奨により、糖尿病患者の癌罹患リスクを減らせることにも注意を払ってほしい」と津金氏は強調する。