日本人33万人のデータを解析した結果、糖尿病患者の癌罹患リスクは糖尿病でない人の1.19倍で、特に大腸癌、肝臓癌、膵臓癌の罹患リスクが有意に上昇することが明らかになった。癌予防の観点から、さらなる生活指導や定期的な癌検診受診の勧奨が必要となりそうだ。


 2013年5月、日本糖尿病学会と日本癌学会が合同で結成した「糖尿病と癌に関する委員会」は、第56回日本糖尿病学会年次学術集会に合わせ、医療者と国民への提言を含む報告書「糖尿病と癌に関する委員会報告」を公表した。

 同報告書では、日本人糖尿病患者において、大腸癌、肝臓癌、膵臓癌のリスク増加を認めたことから、生活習慣の見直しと癌検診の重要性を強調。また、糖尿病治療薬による癌罹患リスクについては、現時点で明らかでなく、十分な治療による良好な血糖コントロールが優先されると指摘した。

 同委員会設立のきっかけとなったのは、10年に米国糖尿病学会(ADA)と米国癌学会(ACS)が合同で出したコンセンサス・レポートだ。このレポートは、糖尿病患者では肝臓癌、膵臓癌、子宮内膜症、大腸癌、乳癌、膀胱癌などのリスクが上昇する一方、前立腺癌のリスクが減少することや、糖尿病治療薬を選択する際に癌罹患リスクを主要な検討事項にすべきではないとの見解を提示した。

 これを受けて、糖尿病と癌がともに増加している日本でも、両者の関連について詳細に調査することが望ましいと判断された。

国立がん研究センターがん予防・検診研究センター長の津金昌一郎氏

糖尿病患者の癌リスクは1.19倍
 今回の報告書で日本人糖尿病患者の癌罹患リスク上昇の根拠となったデータは、本委員会の委員の1人である国立がん研究センターがん予防・検診研究センター長の津金昌一郎氏らが行ったプール解析の結果だ。3万人以上の母集団を持つ国内の8件のコホート研究を対象にしたもので、総登録者数は33万人余りに及ぶ。

 複数の研究を統合する手法としてよく使われるメタ解析では、論文などに掲載されたデータを症例数などから重み付けして再解析するため、個々の研究で補正した交絡因子、カットオフ値などの違いによる影響を排除しきれない。

 これに対し今回のプール解析では、補正する交絡因子やカットオフ値などをできるだけそろえて、個々の研究ごとに癌罹患リスクを算出し直し、最終的な相対リスクを求めたのが特徴だ。

 解析の結果、日本人糖尿病患者の癌罹患リスクは、糖尿病でない人に比べ、男女ともに1.19倍と有意に上昇していた。男女合わせた糖尿病患者の癌罹患リスクを癌種別に見たところ、有意に上昇したのは肝臓癌(ハザード比:1.97、95%信頼区間:1.65-2.36)、膵臓癌(1.85、1.46-2.34)、結腸癌(1.40、1.19-1.64)だった(表1)。

表1●癌種別に見た癌罹患の相対リスクと95%信頼区間(太数字:有意差あり)
(注)解析対象としたコホート研究は、Japan Public Health Center-based prospective Study (JPHC)機JPHC供宮城県コホート、大崎コホート、三府県宮城コホート、三府県愛知コホート、高山コホート、文部科学省科学研究費助成による大規模コホート研究(JACC)の8件。解析対象者は男性が15万5345人、女性が18万792人。
(出典:Sasazuki S, et al. Cancer Sci. in press)

 統計学的に有意ではなかったが、子宮内膜癌(1.84、0.90-3.76)、膀胱癌(1.28、0.89-1.86)のリスクも上昇傾向にあった。これらの結果は、既に報告された海外のメタ解析や国内のコホート研究とほぼ同様だった。