日米同時に開発進む「GPR40作動薬」
血糖依存的にインスリン分泌を促進
 膵β細胞上のGPR40という受容体を直接刺激する、「GPR40作動薬」という新しい作用機序の治療薬の開発が進んでいる。SU薬やDPP4阻害薬のように、インスリン分泌を促進させる作用を持つ経口血糖降下薬だ。
 現在、武田薬品工業が日米同時で開発しているTAK-875(開発コード)は、早ければ年内にも国内の第3相試験が終了する見込みだ。
インスリン分泌惹起作用を増幅
 GPR40は、近年、その機能やリガンドが明らかになってきたG蛋白共役型受容体(G protein-coupled receptor)の1つ。G蛋白共役型受容体は、これまでのヒトゲノム解析で、850種類以上存在することが解明されているが、このうちGPR40は、刺激すると血糖依存性にインスリン分泌を促進する機能を持つことが分かっている。GPR40は主に膵β細胞に発現し、天然のリガンドは中長鎖脂肪酸だ。このGPR40をターゲットとして開発されたのが、GPR40作動薬である。
 GPR40作動薬が膵β細胞のGPR40を刺激した後、どのような機序でインスリン分泌を促進するかについては、現在、研究が進んでいるところだ。これまでの報告によると、GPR40の刺激によってイノシトール1,4,5-三リン酸(IP3)が産生され、このIP3が小胞体のCaを放出させ、細胞内Ca濃度を上昇させることでインスリン分泌を促進するのではないかと考えられている(図A)。
図A●GPR40作動薬の薬理作用のイメージ図(加来氏資料を基に編集部で作成)
GPR40作動薬がGPR40を活性化すると、イノシトール1,4,5-三リン酸の産生、細胞内カルシウム濃度の上昇を介して、インスリン分泌が増大する。(PIP2:ホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸、GLUT:グルコーストランスポーター、DAG:ジアシルグリセロール、PKA:プロテインキナーゼA、PKC:プロテインキナーゼC)
川崎医科大学総合内科学特任教授の加来浩平氏
 川崎医科大学総合内科学特任教授の加来浩平氏は、「GPR40作動薬は、グルコースによるインスリン分泌惹起経路を増幅させる。そうした作用の概念は、DPP4阻害薬と変わらない」と説明する。ちなみに、GPR40作動薬だけでなくDPP4阻害薬も、どのようにグルコースによるインスリン分泌惹起経路を増幅させるのかの詳細は、まだ解明されていない。また、DPP4阻害薬はインスリン分泌促進作用の他にグルカゴン抑制作用を持つが、GPR40作動薬にはグルカゴン抑制作用はないと考えられている。
12週間でHbA1cが1%程度低下
 実際の臨床効果はというと、「第3相試験が終了しないと確かなことは言えないが、第2相試験までの限られた結果の範囲内では、HbA1cや空腹時血糖値の下がり方は良く、単剤なら低血糖の心配がほとんどなかった」と加来氏は話す。
 第2相試験は、食事・運動療法では効果が不十分な国内の2型糖尿病患者396例を対象に12週間、プラセボ群(48例)、TAK-875群(299例)、参照薬としてグリメピリド1mgを投与した群(49例)に分けて実施された。その結果、TAK-875群はプラセボ群よりもHbA1cを有意に低下させ、50mg以上を投与した群ではグリメピリド群と同程度にHbA1cを低下させることが明らかになった(図B)。
図B●TAK-875を使った国内第2相試験の結果
TAK-875を6.25〜200mg投与した群、グリメピリド群、プラセボ群に分け、12週間投与した後のHbA1cの変化(上)と推移(下)をグラフにした。
(出典:Diabetes Care.2013;36:245-50.)
 また、これらの群間で、有害事象の報告頻度は変わらなかった。軽い低血糖症状は、グリメピリド群で49例中2例(4.1%)、TAK-875群で299例中2例(0.7%)の報告があった。
 加来氏は、「GPR40作動薬は、血糖降下作用の面では切れ味が良い印象。とはいえ、現在の糖尿病治療では、安全に長く有効に使える薬が求められている」と話す。単純に血糖降下作用だけを見れば、経口血糖降下薬の中でSU薬の作用が最も強い。しかしSU薬は、低血糖の恐れがあることから発症早期の患者には使いにくいし、罹病期間の長い患者に使用すると2次無効を起こすことが少なくない。
 その点、GPR40作動薬は、血糖依存性にインスリン分泌を促進するので、DPP4阻害薬と同様、単剤なら低血糖の心配がほとんどないと考えられている。「第3相試験を経て、安全に発症早期から使える薬だと分かれば、治療の新たな選択肢として期待できる」と加来氏は話している。 (土田 絢子=日経メディカル)