DPP4阻害薬は7剤の戦いに
 日常診療に急速に普及し、2型糖尿病治療薬の「事実上の第一選択薬」になりつつあるDPP4阻害薬。7月にサキサグリプチン(オングリザ)が発売され7剤となった。それらの血糖降下作用はほぼ横一線で、薬剤間の臨床的な特性の違いは少ない。

 当初、承認されている併用可能な糖尿病治療薬の種類に差があったが、今年になりビルダグリプチン(エクア)とリナグリプチン(トラゼンタ)で適応症が「2型糖尿病」に改訂され併用薬の制限がなくなったことから、その差もほぼ解消された。テネリグリプチン(テネリア)も、BG薬など3種の経口薬との併用を追加で申請している(表1)。

表1●我が国で発売されているDPP4阻害薬(宮川氏による、一部改変)
注)TZD:チアゾリジン薬、αGI:αグルコシダーゼ阻害薬、グリニド:速効型インスリン分泌促進薬、Ins:インスリン

 「DPP4阻害薬では血糖降下作用以外の多面的作用に注目が集まっている。大規模臨床試験によって、糖尿病治療の最終的な目標である細小血管症や大血管症の発症を抑制できるといったエビデンスを示すことが、生き残りの条件になるのでは」と宮川氏はみる。

 一方、インクレチン関連薬による膵障害、特に膵癌については、関連を認めたとする報告と認めなかったとする報告の両論がある。使用経験が限られることもあり、まだ最終的な結論は出ていないのが現状だ(関連記事)

 こうした状況の中で13年3月に米国の研究者が、剖検例において膵外分泌腺および膵内分泌腺の組織学的な変化を認めたとする新たな論文を発表した。これを受けて米食品医薬品局(FDA)が精査を開始したほか、米国と欧州の糖尿病学会と国際糖尿病連盟は連名で、情報はまだ不十分であり、患者に対して自己判断による服薬中止をしないよう呼びかけるなど、医師・患者それぞれに冷静な対応を求める声明を発表した。

 「薬理学的には、DPP4阻害薬は2型糖尿病治療薬の第一選択薬と見なすこともできる。だが長期安全性の評価の確立には、もう少し時間が必要だろう。処方に当たり、このような現状を患者に理解してもらうことが大切だ」と宮川氏は注意を促す。

登場間近のSGLT2阻害薬
 来年早々にも登場するとみられる新しい薬剤が、ナトリウム・グルコース共輸送体(sodium glucose transporter:SGLT)2阻害薬だ。SGLT2は腎臓の近位尿細管に局在し、原尿中からの糖の再吸収を担っている。SGLT2阻害薬は、このSGLT2の活性を抑制して糖の再吸収を抑え、尿中に排泄してしまうことで血糖値を下げる。体重減少作用や脂質代謝改善作用も報告されている。

 6月にシカゴで開催された第73回米国糖尿病学会では、日本人患者を対象にした国内第3相試験の結果も含め、SGLT2阻害薬の演題が多く発表された。「摂取したカロリーを排泄してしまうというこれまでにない機序の薬剤であり、食事療法が疎かにならないかと危惧する専門医もいる。食事療法が全く遵守できない患者や肥満が高度な患者などを適応に、注意深く使い始めることになるだろう」と宮川氏は予想する。

 その先には、GPR40というまた別の機序の薬剤も開発が進んでいる。2型糖尿病の薬物療法は、今後も大きな変化が続きそうだ。