今年もインクレチン関連薬の新薬上市が相次ぎ、GLP1受容体作動薬は4種類、DPP4阻害薬は7種類になった。さらに新しい機序の治療薬の開発も進んでいる。これら新しい薬剤の特徴や使い分けのポイントを探った。


 2013年5月、GLP1受容体作動薬の週1回投与が可能な持続性製剤として、「ビデュリオン」(商品名)が発売された。有効成分は従来の「バイエッタ」(商品名)と同じエキセナチドだが、ポリ乳酸とグリコール酸の共重合体からなる微粒子にエキセナチドを吸着させ、その微粒子が体内で徐々に分解されて有効成分を放出するというメカニズムにより、週1回投与を可能にした(図3)。

図3●GLP1受容体作動薬のアミノ酸配列とビデュリオンの微粒子像
ヒトGLP1と異なるアミノ酸残基を青色で表した。リラグルチドはヒトGLP1をベースに、34番目のリジンをアルギニンに置換し、26番目のリジンに脂肪酸(パルミチン酸)を付加してアルブミンとの結合性を高めることで、血中半減期を延長させた。エキセナチドとリキシセナチドは、アメリカドクトカゲの唾液腺から分離されたexendin4をベースに開発された。どちらも、DPP4による切断部位にあるN末端から2番目のアラニンがグリシンに置換されており、DPP4耐性を持つ。さらにリキシセナチドはC末端側のプロリンを1つ削除してリジン6つを付加し、血中半減期を延長させた。
(写真の出典:Science.1998;281:1161-2.)
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 ビデュリオンの週1回投与とバイエッタの1日2回投与で、エキセナチドの最高血中濃度はほぼ同等という(前者は持続的濃度、後者は1日2回のピークがある)。日本人を含むアジア人を対象とした第3相試験では、血糖コントロールにおいて、ビデュリオンのバイエッタに対する非劣性が認められた。

 週1回の投与で済むことから、これまでの薬物療法でコンプライアンスが不良だった患者が、よい適応になるとみられる。例えば認知障害がある高齢の糖尿病患者で、薬の飲み忘れが多く血糖管理が不良といったケースだ。もちろん、効果が同じなら注射の頻度は少ない方がいいと考える患者は多いはず。このような需要を見込んでか、週1回投与型のGLP1受容体作動薬は、我が国でも複数の薬剤で治験が進んでいる。

 さらに6月には、4番目のGLP1受容体作動薬となるリキシセナチド(商品名リキスミア)が承認された(発売準備中)。1日1回投与するタイプで、インスリンとの併用が可能なことが特徴だ。

 持効型インスリン製剤の登場で、2型糖尿病でも基礎インスリン分泌の補充を目的とした、1日1回のインスリン療法が導入しやすくなった。これに食後高血糖の抑制作用が期待できるGLP1受容体作動薬を併用すれば、血糖の日内変動が少ない、より質の高い糖尿病管理が可能になるという考え方から、インスリンとGLP1受容体作動薬の併用が注目されるようになった。欧米ではこれら2剤の混合製剤が治験中だ。それが使えるようになれば、注射の手間が減り患者の利便性も向上する。

 ただし、2型糖尿病であってもインスリン分泌能が高度に枯渇してしまった患者では、GLP1受容体作動薬の効果が期待できない。そのため併用療法が適する病態など詳細は、さらに検討する必要がある。

兵庫医科大学内科学糖尿病科教授の宮川潤一郎氏

 「週1回投与型」と「毎日投与型」の使い分けについて、兵庫医科大学内科学糖尿病科教授の宮川潤一郎氏は、「GLP1受容体作動薬は、胃運動抑制作用による食後過血糖の改善効果が期待できるが、これは毎日投与するタイプの薬剤の方が強い。食後過血糖と薬物療法のコンプライアンスのどちらを重視するかで、選択されるようになるだろう」と話す。