HbA1c 7.0%は、多くの大規模臨床試験から細小血管症予防のボーダーラインであることが示されている、国際的にも広く認知されている値だ。日本人の2型糖尿病患者を対象としたKumamoto Studyでも、糖尿病合併症はJDS値で6.5%以上からリスクの上昇を認めた(図2)。現在の「良(HbA1c 6.9%未満)」との整合性もある。

図2●Kumamoto StudyにおけるHbA1c値と糖尿病網膜症の関連
(出典:Diabetes Res Clin Pract.1995;28:103-17.)

 また、HbA1c 6.0%は空腹時血糖値の110mg/dLに対応する、診断時の基準となる値の1つだ。これまでの「優(HbA1c 5.8%未満)」の概念を継承しつつも、副作用がなく達成できる場合の「理想的な治療目標」と定義し、安全性の確保を強調した。

 評議員の意見は、案A支持が12件、案B支持が16件、案C支持が24件、コメントのみ6件という結果だった。これを基に学会理事会などでさらに検討を加えた結果、3段階の案Cが採用された。

 その理由として同学会学術調査研究担当の春日雅人氏は、評議員の支持に加え、今までの5段階から急に1〜2段階への改訂では日常診療で戸惑いが生じる懸念があったこと、HbA1c 8.0%未満という基準に科学的な根拠は少ないが、米国老年病学会では虚弱高齢者の目標値としているなど、限定的ながら指標として使われていることを挙げた。

 今年6月に発行された『糖尿病治療ガイド2012−2013』では、HbA1c 6.0%未満を「血糖正常化を目指す際の目標」、同7.0%未満を「合併症予防のための目標」、同8.0%未満を「治療強化が困難な際の目標」と位置づけている。ただし、一律的な目標設定には弊害も認められることから、「治療目標は(患者の)年齢、罹病期間、臓器障害、低血糖の危険性、サポート体制などを考慮して個別に設定する」と明記した。

 この目標値は、既に本年6月1日から運用が開始されている。新しい治療目標の周知を図るため、日本糖尿病学会では、早期からの血糖コントロールが合併症予防に重要であることを強調した「熊本宣言2013」を新たに発表した。