疾患による呼吸機能の変化を、安静時呼吸で測定できる広域周波オシレーション法への関心が高まっている。スパイロメトリーとは違って努力呼吸が不要なので患者の負荷が少なく、治療効果判定の有用性も期待されている。診療報酬点数が引き上げられたことで、普及が進みそうだ。


 喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)では、気道閉塞や肺の柔軟度低下などにより呼吸機能が低下する。診療現場で用いられるスパイロメトリーによる1秒量(FEV1)測定は、気道閉塞を簡便に把握できるが、努力呼気を測定するため、患者に負担感がある「苦しい検査」であること、測定結果が必ずしも症状の変化と一致しない場合があることが課題とされる。

東北大学環境・安全推進センター教授 黒澤 一氏

 広域周波オシレーション法は、これらを解決し、スパイロメトリーを補完し得る新たな呼吸機能検査法の1つとして注目を集めている。東北大学環境・安全推進センター教授の黒澤一氏は、「国内では、200超の医療機関が導入していると見られる。今年5月の日本呼吸器学会でも、広域周波オシレーション法を用いた研究成果が30題以上発表された」と話す。

 広域周波オシレーション法は、安静時呼吸で呼吸機能を調べる生理学的検査法で、強制オシレーション法の一種。強制オシレーション法は、特殊なスピーカーから口腔内に音波を送り込み、気道径や弾性特性によって変わる圧変化や流量変化との位相差から、呼吸抵抗を測定する。さらに、広域周波オシレーション法では、広い周波数成分を含む音波(パルス波)を発信し、反射波から周波数成分を抽出することで、呼吸抵抗値の周波数特性を知ることができる。

 一方、単一周波を用いた強制オシレーション法は古くからあり、健常人では周波数によらず呼吸抵抗値はあまり変化しないが、COPD患者では、低い周波数で呼吸抵抗が高くなることが知られていた。

 広域周波オシレーション法を普及させる要因になったのが2012年の診療報酬改定だ。同法による「呼吸抵抗測定」はそれまで強制オシレーション法と同じ70点だったが、150点へと大幅に引き上げられた。

呼吸器科医の“もう1つの聴診器”
 広域周波オシレーション法による呼吸抵抗測定装置「MostGraph−01」(チェスト社、写真1)では、呼吸抵抗の経時的な変化をグラフ表示できるのが特徴だ。そのため、周波数や患者の呼吸周期による呼吸抵抗の変化を把握しやすい。呼吸抵抗の変動パターンは疾患によって異なる(図1)ほか、治療に伴い変化する(次ページ図2)。呼気と吸気でも変わる(次ページ図3)。

写真1●MostGraph−01
(写真提供:チェスト社)

図1●広域周波オシレーション法による呼吸機能測定結果の3Dカラーグラフ(MostGraph−01による)
左から健常者、COPD患者、喘息患者。健常者では呼吸抵抗が低く、周波数や呼吸周期による変動も少ない。COPD患者では周波数が低いと呼吸抵抗が高く、呼吸周期により変動している。喘息患者では呼吸抵抗は高いが、周波数や呼吸周期による変動は少ない。
(出典:チェスト社資料)
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