口腔ケアの充実にも言及
 具体的には医療従事者向けのキャンペーンでは、肺炎の予防策としてワクチン接種と栄養状態の改善、口腔ケアの充実を求めることにしている。もちろん、肺炎の診断と治療にも触れる予定だ。

 このうちワクチンについては、インフルエンザワクチンに加えて肺炎球菌ワクチンの予防接種を行うことにより、高齢者慢性肺疾患患者では入院率と死亡率がともに大きく減少する事実を強調(表1)。また、肺炎球菌ワクチンに関しては、予防接種によって高齢者の医療費が大幅に削減されるとする試算結果も報告されている(表2)。そのため65歳以上の高齢者に対しては、インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの同時接種を推奨することにしている。

表1●高齢者慢性肺疾患患者におけるワクチンの効果
(出典:Nichol KL.Vaccine.1999;17:S91-3)

表2●肺炎球菌ワクチンに接種に関する国全体の医療費の試算
(厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会ワクチン評価に関する小委員会肺炎球菌ポリサッカライドワクチン〔成人用〕作業チーム報告書より作成)

 「日本の肺炎球菌ワクチン接種率は、欧米に比べるとまだ低く、接種に要する費用助成も全自治体の5割強にとどまっている。ここは政治を動かして、高齢者にはインフルエンザワクチンと併せて使える環境を整備したい」と河野氏は言う。

図2●介護施設入所高齢者における口腔ケアの評価(介入2年間の効果)
(出典:Yoneyama T,et al.Lancet.1999;354:515.)

 一方、口腔ケアの充実を独立して取り上げるのは、高齢者に誤嚥性肺炎が多い実態を反映してのことだ。「単に口腔内の雑菌を減らすだけでなく、その刺激で嚥下機能が改善し、肺炎の罹患率や死亡率が低下するというエビデンスも出ているので(図2)、そのことを医師には知ってほしい」と河野氏。

 肺炎の診断と治療に関しても、高齢者の肺炎ならではの知見を盛り込むことにしている。河野氏は、「高齢者の肺炎では高熱や呼吸症状が出にくい例が多いので、体がだるい、食欲がない、何となく元気がないといった場合でも、咳が出ていれば肺炎を疑ってX線写真を撮る必要がある。高齢者の場合は特に早期の診断が重要であることを強調したい」と話す。

 ところで、実際の診療現場で臨床医が頭を悩ませるのは、死期が迫った高齢患者にどこまで積極的な治療を行うかという点ではないだろうか。実は、患者や家族の意思を勘案して治療の差し控えを検討すべきかどうかなどについては、呼吸器学会の『医療・介護関連肺炎診療ガイドライン』が既に指針を示している。「そういうガイドラインがあるということを、ぜひ知ってほしいし活用してもらいたい」と河野氏は語る。

 同学会では現在、一般と医療従事者に向けた「ストップ肺炎」キャンペーンのパンフレット作成作業が最終段階を迎えており、7月下旬か8月上旬にも完成の予定だ。会員は全員に配布されるが、会員以外の医師も、学会事務局に問い合わせれば入手可能だという。