吸入ステロイド薬を噴霧する際には、デバイスを指で操作する必要がある。しかし、「手指筋力が30Nくらいはないと多くのデバイスは押せない。筋力が低下していて操作が難しい場合は、補助具を取り付けてもらうよう薬剤師に指示している」と岩永氏。また、噴霧と吸入のタイミングをうまく同調させることができない患者には、普通の呼吸リズムで無理なく吸入が可能なエアロチャンバープラス(アムコ社)などのスペーサーの使用も有用だ。

 高齢患者の場合、こうした様々な問題を考慮して、適切な吸入方法を選択する必要がある(図3)。岩永氏は、「最大吸気量が30L/分未満であれば、電動式吸入器(ネブライザー)が必要。認知力が低下している場合も、介護者がネブライザーで吸入させるか、それも不可能ならば、経口薬や貼付薬を使用するとよい」と付け加える。

図3●高齢者喘息における吸入療法の選択
注)pMDI:加圧式定量噴霧吸入器 DPI:ドライパウダー定量噴霧器
(Gibson PG,et al.Lancet.2010;376:803−13.を一部改変)

定期的に吸入方法の再指導を
 喘息患者の多くは長期にわたり治療を継続しなければならない。岩永氏は、「定期的に問診したりピークフロー値などをチェックし、症状が悪化した場合には、吸入がうまくできていない可能性があるので、目の前で患者さんに吸入してもらうとよい。きちんと吸えていないことが分かったら、再度薬剤師に吸入指導の実施を依頼している」と言う。

 図4は、近畿大附属病院の通院患者の1例だ。治療開始後12カ月くらいでピークフロー値が低下し始めたが、改めて吸入指導を行ったところ再び改善が見られた。

図4●再吸入指導によりピークフロー値の改善が見られた1例
(出典:久保裕一, 東田有智. 喘息2005;18:64−8.)

 喘息患者は、気道過敏性を有するため完治例はまれで、長期的な管理が必要とされる。しかし岩永氏は、「治らない場合も、ステロイド薬の吸入療法をきちんと行えば、症状も取れて健康な人と同じ生活が送れるようになることを、しっかり患者に伝える必要がある。高齢患者の場合には、繰り返し吸入指導を行うことが重要だ」と強調する。