人口の高齢化を背景に、喘息患者における高齢者の占める割合は増加傾向にある。高齢者であってもステロイド薬の吸入療法が治療の要であることに変わりはないが、適切なデバイスを選択し、きめ細かな吸入指導を行うことで、服薬アドヒアランスの向上が期待できる。


近畿大学呼吸器・アレルギー内科准教授 岩永 賢司氏

 「近年、喘息患者に占める高齢者の割合は増加傾向にある(図1)が、高齢者の場合、治療を中断したり吸入がうまくできなかったりするため、コントロールが悪くなる例が少なからずある」と話すのは、近畿大学呼吸器・アレルギー内科准教授の岩永賢司氏だ。

 日本における喘息死は、順調に減少してきている。しかし、いまだに年間約2000人が喘息の発作で死亡しており、そのうちの約9割は65歳以上の高齢者だ。岩永氏は、「ステロイド薬の吸入療法を徹底できれば、喘息死は防ぐことができる」と話す。

図1●年代別喘息患者の割合
(厚生労働省患者調査より作成)

 喘息患者の約7割が一般内科を受診している中で、高齢者の喘息が正しく診断されていないケースも少なくないようだ。「その原因の1つは、呼吸が苦しいのは加齢によるものとの思い込み。患者本人も、慣れによって息切れを感じにくくなっている場合もある」と岩永氏は指摘する。

 その他にも、高齢者の喘息が見逃されてしまう背景には、中高年からの喘息発症はまれだという誤った認識や、スパイロメトリーの使用率の低さなどもある。「心不全など、症状が類似した併存疾患がある場合は、特に注意が必要だ」と岩永氏は言う。

薬剤吸入が困難な例への対応
 高齢者の場合も、喘息の治療の基本は吸入ステロイド薬の投与になるが、その選択に際しては幾つかの配慮が必要だ。

 図2は、広域周波数オシレーション法で測定した共振周波数(Fres)と年齢の関係を示している。Fresは末梢気道病変や不均等換気を反映する指標とされるが、年齢とともにその値が大きくなっているのが分かる。岩永氏は、「高齢者の場合は粒子径の小さい薬剤の方がよいだろう。中枢気道だけでなく末梢気道まで到達する至適粒子径は2 〜 3μmとの報告がある」と話す。

図2●喘息患者における年齢と呼吸抵抗(Fres)
(出典:Iwanaga T,et al.Acta Medica Kinki Univ.2012:37;71−6.)