東北大学呼吸器内科学分野教授の一ノ瀬正和氏

 「COPDの増悪が疾患の早期進行や死亡に大きく関わっていることが明らかになり、増悪抑制の重要性は増してきている。また、治療により増悪を予防できることも最近分かってきた」。ガイドライン作成委員会の責任編集委員を務めた東北大学呼吸器内科学分野教授の一ノ瀬正和氏は、増悪予防の意義をこう説明する。

普段の重症度を考慮した治療を
 医師が把握することがないCOPDの増悪が全増悪の半分近くあることが、英国で報告されている。このように診断されず治療もされない増悪は、息切れ、喀痰の増加、痰の色調変化などの症状が同時に複数出現することが少なく、持続期間も比較的短いとされる。しかし、診断された増悪と同様に、その後のQOLを低下させるため注意が必要だ。

 医師は患者に質問して増悪の有無を必ず確認し、ちょっとした変化でも軽視することなく受診するように、普段からの指導を徹底して行うことも重要となる。

 増悪の典型的な症状として、痰、咳、息切れの3つが挙げられる。注意を要するのは、例えば、息切れを重苦しさや不快感と表現するなど、患者によって訴え方が様々な点だ。

 増悪期の薬物治療は、「ABCアプローチ」が基本となる。このうちB(bronchodilators)の気管支拡張薬、短時間作用性β2刺激薬(SABA)が第一選択だ(図1)。もし痰が膿性化していたり感染症罹患の兆候があれば、A(antibiotics)の抗菌薬を、また安定期の病期がIII期(高度の気流閉塞)以上だったり入院管理が必要であれば、C(corticosteroids)の全身性ステロイド薬の投与を考慮する。

図1●増悪期の薬物療法(気道分泌への対応を含む)のポイント
(出典:COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第4版)

 これらをまとめて示すと図2のようになる。SABAの投与は必須だが、抗菌薬とステロイド薬は必要に応じて処方を検討する。

図2●増悪が認められた患者への治療の考え方
(一ノ瀬氏への取材を基に編集部で作成)

 SABAを投薬しても効果が不十分な場合、次の治療内容を決めるポイントは、患者の普段の重症度になる。重症、最重症の患者になると残存する呼吸機能に余裕が少ないため、「SABAに対する治療反応性が悪ければ、すぐに専門医に紹介するか、入院させて経過観察するべきだ」と、一ノ瀬氏は早めの対応の重要性を強調する。また、全身性ステロイド薬の投与が必要と判断されるようなケースも、「専門医に紹介した方がよい」(同氏)。

 一方、中等症までであれば、短時間作用性抗コリン薬(SAMA)やテオフィリンを併用するといった段階的な対応も可能となる。