カナダ・モントリオール大学のJean-Claude Tardif氏

 P-セレクチンを標的とした完全ヒト化遺伝子組換えモノクローナルIgG4抗体であるinclacumabは、抗炎症作用や抗血栓作用、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の心筋傷害の抑制作用などが期待されている。今回、カナダ・モントリオール大学のJean-Claude Tardif氏らは、非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)患者を対象に、同薬剤がPCIに伴う心筋へのダメージを抑制し得るかを検討するSELECT-ACS試験を実施した。

 P-セレクチンは活性化された血管内皮細胞や血小板に発現する細胞接着分子で、白血球や血小板が血管表面をローリングするのに重要な役割を担っている。動物モデルでは、P-セレクチンの阻害により、傷害後の好中球や血小板の接着、マクロファージの集積、新生内膜の形成が抑制されることが示唆されている。

 登録対象としたのは18〜85歳のNSTEMIで、冠動脈造影検査とPCI施行が予定されていた患者。一方、主な除外基準は、72時間以内のPCI施行に加え、脳血管疾患や脳卒中、出血性疾患、血液疾患、コントロール不良な重度高血圧、冠動脈バイパス術(CABG)の既往など。

 これらの条件に適合した患者を、プラセボを投与する群(プラセボ群、175例)、inclacumab 5mg/kgを投与する群(5mg群、179例)、同20mg/kgを投与する群(20mg群、176例)に無作為に割り付け、PCI施行の1〜24時間前に点滴静注した。

 冠動脈造影検査の段階で、冠動脈に有意な狭窄がない、CABGを施行、薬物療法を選択といった理由から、計190例がPCIを受けなかったため、PCI施行例は340例だった。そのうち18例を、ベースラインあるいは追跡時のトロポニンIのデータ欠損により除外した結果、有効性解析の対象は322例となった。また、安全性解析の対象は点滴静注を受けた530例とした。

 有効性解析の対象322例における患者背景、PCI所見、併用薬は、3群間で差はなかった(表1)。年齢は60歳前後で、男性が8割弱を占め、2割強が糖尿病の合併例だった。

表1●患者背景と服薬状況

 薬剤の処方率に関しては、アスピリンやスタチン、β遮断薬は9割以上に、ACE阻害薬とアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を合わせると9割前後に投与されていた。