慢性腎臓病(CKD)患者の心血管イベント発生率と全死亡率は、推算糸球体濾過量(eGFR)が15mL/分/1.73m2未満となると有意に上昇することが分かった。国内17施設から登録したCKD患者を対象とし、併存疾患や治療内容、臨床転帰を前向きに観察するCKD-JAC研究の中間解析の結果。福島県立医科大学腎臓高血圧・糖尿病内分泌代謝内科学の渡辺毅氏が発表した。

 対象は20〜75歳の日本人患者で、eGFR値が10〜59mL/分/1.73m2だった2975例。多発性嚢胞腎、HIV感染、癌、肝硬変、臓器被提供者などは除外した。研究期間は4年で、フォローアップは6カ月ごとに行うこととし、研究は現在進行中だ。今回は、12年11月までのデータを基に、腎機能と心血管イベントについて中間解析を行った。

 エンドポイントは、全死亡、心血管イベント、透析導入とした。eGFR値によって、45mL/分/1.73m2以上のStage G3a群(306例)、30mL/分/1.73m2以上45mL/分/1.73m2未満のStage G3b群(1051例)、15mL/分/1.73m2以上30mL/分/1.73m2未満のStage G4群(1148例)、15mL/分/1.73m2未満のStage G5群(470例)に層別化した。

 患者背景は、年齢がStage G3a群で54.6歳、G3b群で60.0歳、G4群で61.5歳、G5群で62.1歳と、eGFR値が低いほど高かった(P for trend <0.0001)。

 また、心血管イベント既往率、尿蛋白陽性率、収縮期血圧、降圧薬内服率、赤血球造血刺激薬使用率などは、eGFR値が低い群ほど高値だった(いずれもP for trend<0.0001)。それに対し、BMI、血清アルブミン値、血清カルシウム値、ヘモグロビン値は、eGFR値が低い群ほど低かった(いずれもP for trend<0.0001)。

 12年11月の時点で1466例が死亡や転院、透析導入などの理由で追跡を打ち切ったため、現在も追跡しているのは1509例だ。

 糖尿病の有無別に4群の背景を比較すると、心血管疾患の既往率はいずれの群でも、糖尿病例で2〜3倍程度高かった。また、非糖尿病例ではStageが上がるごとに心血管疾患の既往率が有意に上昇する傾向が確認された(P for trend=0.001)。一方、糖尿病例では、かろうじて有意となる傾向を認めた(P for trend=0.046)。

 全死亡のKaplan-Meier曲線をStage別に描いたところ、Stageが高い群ほど有意に高かった(P=0.0058)。糖尿病の有無で分けて見ると、非糖尿病例では同様にStageが高い群ほど有意に死亡率が高まったが(P=0.0031)、糖尿病例では有意な差が認められなかった(P=0.2526)。

 心血管イベント発生と透析導入をエンドポイントとしてKaplan-Meier曲線を描くと、Stageが高い群ほど有意に高かった(P<0.0001)。しかし、糖尿病例と非糖尿病例に分けて見ると、有意な差は認められなかった。

 CKD-JAC研究のCKD Stage別の年間死亡率、心血管イベント発生率は、米国から報告されているコホート研究の結果に比べて極めて低く、宮城県内の病院で行われた艮陵研究の結果よりもやや低かった。また、米国における腎臓専門施設の研究であるCRIC研究の基礎データは、日本の2研究に比べ、心筋梗塞や慢性心不全など心血管疾患既往率が明らかに高かった。

 糖尿病罹患率も米国は日本よりもやや高い。最も異なるのはBMIで、日本の2研究はどちらも23.5だったが、米国のCRIC研究は32.1と大きく上回っていた。また、艮陵研究とCRIC研究ではACE阻害薬またはARBの使用率が6〜7割弱だったが、CKD-JAC研究では9割と高く、「これがデータの違いを考える上でポイントとなる可能性もある」(渡辺氏)という。

 渡辺氏は、「日本の腎臓専門病院17施設で治療されているCKD患者では、心血管イベント発生率と全死亡率はCKD Stage G3a〜4では大きな上昇はなく、Stage G5で初めて有意差が認められた。また、発生頻度は他のコホート研究、特に米国の研究データに比べれば極めて低かった。糖尿病の関与については、全死亡率、心血管イベント発生率ともに上昇傾向にはあるが、有意差はなかった」とまとめた。