2012年に発表されたJ-MELODIC試験で、長時間作用型ループ利尿薬のアゾセミドは短時間作用型のフロセミドに比べ、慢性心不全患者における心血管死または心不全悪化による予期せぬ入院を45%、有意に減少させることが示された。その理由の1つとして、アゾセミドが神経体液性因子を活性化させないという特徴を持つことが挙げられている。今回、兵庫医科大学循環器内科の福井美保氏らは、神経体液性因子の抑制作用を持つβ遮断薬投与の有無別に、両薬剤の効果を検討した。

 対象は同試験の登録患者320例のうち、β遮断薬投与の有無が確認できた316例。登録条件は、左室駆出率(LVEF)を問わずNYHA心機能分類でII〜III度の20歳以上の慢性心不全患者で、ACE阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)などの標準治療とループ利尿薬の投与を1カ月以上受け、症状が安定している患者。一方、糖尿病や高血圧のコントロール不良、閉塞性肥大型心筋症、血清クレアチニンが2.5mg/dL超、急性冠症候群などを認めた患者は除外した。

 β遮断薬が投与されていなかった患者は、フロセミド群73例、アゾセミド群66例の計139例だった。両群の患者背景を見ると、年齢(フロセミド群74.7歳、アゾセミド群75.0歳)、女性比率(60%、45%)、BMI(23、23)、収縮期血圧(129mmHg、130mmHg)、心拍数(75拍/分、71拍/分)、推算糸球体濾過量(55.5mL/分/1.73m2、50.7mL/分/1.73m2)、心胸郭比(57.1%、56.8%)、LVEF(59.4%、57.1%)などにおいて、有意差はなかった。

 Cox比例ハザード回帰モデルを用いて心血管死の発生リスクを見たところ、β遮断薬が投与されていた患者を対象とした解析では、フロセミド群とアゾセミド群の間で有意な差はなかった。一方、β遮断薬が投与されていなかった患者の解析では、アゾセミド群の方が、心血管死のリスクが有意に低かった(P<0.05)。β遮断薬が投与されていなかった患者における心血管死の発生率は、フロセミド群11.0%、アゾセミド群4.5%だった。

 以上から福井氏は、「β遮断薬が投与できない慢性心不全患者に対しループ利尿薬を使用する場合、長時間作用型のアゾセミドが望ましいのではないか」との見解を示した。