その結果、図2に示すように、被災者の平均血圧は震災1年後も142.6/81.6mmHgと高い状態が続いていたが、震災2年後には154.7/93.2mmHgとさらに上昇していることが分かった。

図2●山田町など3市町における震災後の血圧の変化(寺山氏による)

心原性脳塞栓症は震災1年後から増加
 一方、脳卒中の発症が増えているかどうかを確認するため、山田町、大槌町、陸前高田市にある病院や診療所の医師に、脳卒中を発症した患者数について聞き取り調査を行った。その結果、脳卒中を発症した患者は11年4月〜12年3月に3市町合計で11人(月平均0.9人)だったのに対し、12年4月〜13年1月には52人(同5.2人)と、震災1年後までに比べて、1年後から2年後まででは、月平均患者数が5倍以上に増加していたことが分かった(図3)。

図3●震災後の脳卒中発症数の変化(寺山氏による)

 さらに寺山氏は、同じく三陸沿岸地域の釜石市にあり、同市内の脳卒中患者がほぼ全て搬送される岩手県立釜石病院の患者データに着目し、人口1000人当たりの脳梗塞発症率を算出してみた。すると、震災前の脳梗塞発症率は3.3、震災1年後も3.2と同様だったが、震災2年後になると4.2に増加していた。

 図4は、この脳梗塞発症率をアテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓、ラクナ梗塞に分類して震災後の変化を見たものだ。「血圧が高い状態が、どのくらい続けば脳卒中が発症するかの答えは明確になっていない。しかし、今回の被災者のデータでは、血圧の高止まり状態が続いた結果、ラクナ梗塞は震災後2年から増え始めていて、心房細動によって起こる心原性脳塞栓は、それよりも前の1年を過ぎた頃から増えていることが分かった」と寺山氏は話す。

図4●岩手県立釜石病院における震災後の脳梗塞発症率の変化(寺山氏による)

住環境整備で心理的ストレス軽減を
 被災地で仮設住宅に暮らす人たちの健康状態は、今なお悪い状態が続いている。早急に、被災者の生活環境や健康状態を改善する施策が求められている。

 寺山氏は、「高血圧対策としては、心理的ストレスを減らして栄養・運動などの健康意識を高める必要があるが、住環境の整備が第一だろう」と話している。