岩手県三陸沿岸地域において仮設住宅に暮らす被災者の血圧が、震災後2年が経過しても高止まりしており、改善していないことが明らかになった。さらにここにきて、脳卒中の発症も増加し始めており、予断を許さない状況だ。


岩手医科大学神経内科・老年科教授 寺山 靖夫氏

 「震災から2年が過ぎたが、この1年で被災地での脳卒中の発症が約5倍に増えていることが分かった。被災者を取り巻く環境は改善されておらず、特に仮設住宅に暮らす人々の生活環境悪化の影響が出始めているようだ」と話すのは、岩手医科大学神経内科・老年科教授の寺山靖夫氏だ。

 日本脳卒中学会(小川彰理事長)もこうした状況を踏まえ、政府に対して2013年3月26日、「被災者の生活・健康環境の改善」および「強力で有効な脳卒中予防体制の整備」に関する施策の迅速な進展を求める学会声明を発表した。

仮設住宅生活者の血圧が高止まり
 寺山氏は当初、被災者検診の受診者データをマッチングさせて、震災前(11年2月)と震災後1年(12年2月)の健康状態の変化について検討してみた。しかし、予想に反して、震災の影響による健康状態の悪化はさほど見られず、高血圧治療者の割合も震災後にわずか3ポイント増加しているにすぎなかった。

 「震災後であっても検診を受ける余裕があった受診者は、比較的健康意識が高い人たちと考えられる。一方、震災後に検診を受けられなかった人が仮設住宅などに多く住んでいる。それらの人たちの多くは厳しい住環境による心理的ストレスや健康上の問題を抱えている可能性があり、実態を調べる必要があると考えた」と寺山氏は話す。

図1●調査を実施した岩手県三陸沿岸地域

 そこで寺山氏らは、岩手県の三陸沿岸地域を対象に新潟大学などが中心となって12年から実施している深部静脈血栓症(DVT)検診の一環として、主に仮設住宅に暮らす被災者の血圧測定を開始した。

 対象者は、山田町1601人、大槌町853人、陸前高田市1666人の合計4120人(図1)。この中で、脳血管障害の既往歴がないと推測された1090人(山田町522人、大槌町230人、陸前高田市338人、平均年齢72.1歳)の血圧データを調べた。