そこでこの患者に対しOSASの治療として、自動圧調整式経鼻的持続陽圧呼吸(オートCPAP)を開始。高血圧の治療としては、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)とCa拮抗薬を投与したが、効果不十分だったためエプレレノンを追加した。

 エプレレノン開始前後での経鼻的持続陽圧呼吸(CPAP)治療圧を比較したところ、開始前には7.9cmH2Oだった平均90%圧が、開始2カ月後に6.3cmH2Oまで低下した。さらに、5/hr以下を治療目標値とした平均AHIは、エプレレノン開始前が3.0/hr、開始2カ月後が3.6/hrと低値を保っており、治療圧が低くなっても同様の治療効果が得られていた。

 CPAP療法は、鼻マスクなどを介して上気道に陽圧をかけ、睡眠中の気道の開存を維持するものだ。この治療によってOSASの症状が改善し、心血管イベントの抑制効果が期待できるが、SASを治癒させることはできない。喉頭・咽頭疾患のほか、肥満や高血圧など、SASの原因となっている背景疾患の改善がなければ、患者がCPAP療法をやめることは難しい。

 だが、この治療結果から西坂氏は「開始2カ月後の治療圧は6.3cmH2Oだったが、5.0cmH2O以下にまで減ずることができれば、CPAPの使用を中止できるかもしれない」と期待する。

 OSASと高アルドステロン血症の因果関係については、「どちらが原因でどちらが結果かは分かっていない」(西坂氏)とのことだが、間歇的低酸素による交感神経機能の亢進によってRAA系が活性化され、高アルドステロン血症に至るとする説があるという。反対に、高アルドステロン血症が引き起こす塩分・水分貯留によって気道粘膜の浮腫が起こり、気道狭窄によってOSASが誘発、または増悪している可能性もある。

中枢性SASにも有効な可能性
 今後は、どのような症例で抗アルドステロン薬が有効なのか、適応を明確にする必要がある。前述の米国アラバマ大学のグループによる報告では、SASを合併する治療抵抗性高血圧患者へのスピロノラクトン投与でSASの治療効果が認められたのは、高アルドステロン血症合併患者のみだった。

 西坂氏は、「SASは多因子による疾患のため、1つの治療法が全例に効くとは限らない。高度肥満症例や治療抵抗性高血圧以外の高血圧症例における有効性などを検討していきたい」と今後の計画を語る。

 さらに西坂氏によれば、抗アルドステロン薬の治療効果はOSASに限らない可能性があるという。SASはOSASと中枢性SAS(CSAS)の2つに大別される。

 CSASの中には、心不全の結果として発症する例がある。抗アルドステロン薬は心不全治療でも頻用されることから、西坂氏はこのような心不全を原因とするCSASに対し、抗アルドステロン薬が改善効果を持つと見込んでいる。

 西坂氏は、「CPAP治療における患者の負担を軽減したり、AHIが5〜20/hr程度の軽症SAS患者であれば、薬剤だけで改善できるなど、治療の選択肢が増える可能性がある。そうなれば、患者にとって大きなメリットとなる」と話している。