移植拡大には課題山積
 なぜ、小児心移植が世界の現状に比べ、これほど少ないのか。小児心移植拡大のために解決すべき課題として布田氏は、(1)移植待機時に用いる補助人工心臓(VAD)の国内承認、(2)臓器提供医療機関の負担感解消、(3)移植後管理施設の整備、(4)臓器提供ドナー増加─の4点を挙げる。

写真1●ドイツ・Berlin Heart社の小児用VAD

 日本では、小児対応VADの導入が著しく遅れている。ISHLTレジストリーによると、小児心移植例の約25%が待機時に体外人工肺(ECMO)かVADを使用している。日本では現在、小児対応VADが未承認で、ドイツ・Berlin Heart社の製品の臨床試験を実施している段階だ(写真1)。

 布田氏は、「米国ではVADを装着して数カ月程度で心移植を受けられるが、日本では最低でも1〜2年待たなければならない。患者はもちろん、医師や看護師の負担も大きい」と指摘する。成長により、デバイス変更手術が必要になる場合もあるという。

 さらに、臓器提供側病院の負担感にも注目する必要がある。臓器提供に当たり、ドナー患者の末期医療と並行して虐待の有無を確認し、遺族の承諾を得て臓器を摘出する。予定手術の延期や遺族へのグリーフケアにも人手が必要となる。「経済的な報酬に加え、臓器提供側も充実感を得られる仕組みづくりが大切」(布田氏)という。

 小児心移植の普及には、移植後に必要な免疫抑制や合併症、悪性腫瘍などの治療を行える重症小児管理施設(PICU)の整備も欠かせない。

 現時点で心移植患者の移植後生存率は、ISHLTの国際統計と比べて日本は良好だ(図3)。布田氏らの施設における自験例では、10年生存率、20年生存率とも85.3%と高い。移植数が増加したときに、こうした好成績の移植後管理を維持できるかどうかは大きな課題となる。

図3●小児心移植患者の生存率の比較(布田氏による)

 布田氏は、「小児心移植を増やすためには、成人も含め、死後の臓器移植全体が増える必要がある」と強調する。日本では00年から10年までに腎移植が約700例から約1600例に増加した。しかし、増加分の多くは生体腎移植で、死体腎移植は200例程度で推移していた。「もし、この200例を3倍の600例に増やすことができれば、心臓移植も現在の年間30例から100例近くになる。そうすれば小児心移植も年間10例程度になる。このような発想による努力が必要ではないか」と布田氏は話す。