近年、経口投与が可能な分子標的治療薬が数多く登場したこともあり、外来で癌化学療法を受ける患者が急増している。そのため、プライマリケアにおいても、高血圧や心不全といった日常的な循環器疾患の症状が、実は抗癌剤の副作用だったというケースに注意する必要が出てきた。


 アントラサイクリン系など、従来からある抗癌剤による循環器の副作用は、これまでにも報告されていた。しかし、今までの癌化学療法は一般に入院で行われていたため、問題となる副作用が生じれば、すぐに適切な対応が可能だった。

 だが、分子標的治療薬が複数登場したことで、外来での化学療法が急増している。それに伴い、癌化学療法中の患者が一般内科を受診する確率は確実に高まっている。

京都大学医学部附属病院臨床研究総合センター早期臨床試験部助教 南 学氏

比較的高頻度に発現する高血圧
 京都大学医学部附属病院臨床研究総合センター早期臨床試験部助教の南学氏によれば、癌化学療法の患者が受診してきたときは、2つのことに注意が必要という。

 1つは、近年登場した分子標的治療薬の副作用として、これまでよく知られている脱毛や吐き気、血球減少などの他に、循環器系の副作用が出現する可能性があることだ。主なものとして、心機能低下、高血圧、うっ血性心不全、動静脈血栓塞栓症、不整脈、心筋虚血などがある(表1)。中でも、比較的高頻度に見られる副作用として、血管新生阻害薬による高血圧がある。

表1●主な分子標的治療薬による循環器系の副作用(南氏による)
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 副作用は、癌化学療法の期間中に発現するケースが多いが、中には治療開始1〜2カ月後もしくは半年が経過してから出現することもある。 

癌化学療法中に高血圧が認められた場合は降圧治療を行うことになるが、抗癌剤が原因で発症した高血圧を対象とした治療ガイドラインはなく、いつからどのような降圧薬で治療すべきか、さらに降圧目標値をどの程度に設定すべきかについて明確な指針がない。そのため基本的には、本態性高血圧と診断された患者と同じ治療を行うことになる。

 また、こうした循環器系の副作用が発現するメカニズムも明らかになっていない。

 南氏は、「分子標的治療薬が登場したことで、高血圧の原因に癌化学療法が加わったと言ってもよいだろう。発現頻度は決して高くはないが、抗癌剤によっては循環器系の副作用を引き起こす可能性があることを、全ての医療従事者が知っておいてほしい」と注意を促す。