大動脈弁置換術(AVR)がハイリスクまたは実施不能な、重症の大動脈弁狭窄症に対する新たな治療の選択肢として期待される経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)。日本では承認申請中だが、欧米では保険治療の対象になって数年がたつ。TAVI実施件数の多いフランスでの実績と併せ、TAVIの現状を紹介する。


 重症の大動脈弁狭窄症(AS)の治療では、外科的なAVRが一般的だ。しかし、AS患者の3〜5割は、高齢や合併症などの問題からAVRを実施できず、予後が悪いことが知られる。そうしたAS患者への新たな治療選択肢として開発されたのが、TAVI(transcatheter aortic valve implantation)だ。

 TAVIは、カテーテルに収めたデバイス(人工弁)を大腿動脈から挿入して経大動脈的に、もしくは心尖部から挿入して心室を通し大動脈弁の部位に到達させ、その場で拡張させて人工弁を留置する。AVRでは石灰化などで硬化した弁組織を丁寧に除去した後に人工弁を留置するが、TAVIでは石灰化した弁を土台として利用し、そこに引っかけるように人工弁を置く。

 TAVIの手術時間は1〜2時間で、AVRの半分程度と大きく短縮される。また、手術室内で抜管できるため、AVRで必要な集中治療室での管理日数を短縮できる。デバイスのアプローチ方法としては、侵襲性が低く、カテーテルの挿入痕も小さい大腿部からのアプローチが選択されることが多い。最近では、大動脈や鎖骨下動脈からTAVIデバイスを留置するアプローチも報告されている。

 2012年には、AVRの実施が難しいハイリスクなAS患者を対象にした、日本におけるTAVIの臨床試験「PREVAIL Japan Trial」の結果が発表された。デバイス留置成功率が9割を超えたほか、術後の大動脈弁面積が有意に増加するなど、成績は良好だった。

慶應義塾大学循環器内科特任講師の林田健太郎氏

TAVI導入後にAVR件数も増加
 既にフランスでは、TAVIが公的医療保険の適用対象となってから数年がたつ。日本人でただ一人、世界共通のTAVI指導医資格を持つ慶應義塾大学循環器内科の林田健太郎氏によると、TAVI治療を安全に実施するために、各施設では手術の人員体制を工夫しているという。

 林田氏が勤務していたInstitut Cardiovasculaire Paris Sud(ICPS、写真1)を含め、フランスでTAVIの保険適用が認められている33施設中32施設で、大腿部から挿入するアプローチの場合には内科医を第一術者にしている。これは、カテーテル操作に習熟した内科医が行う方が好ましいとの判断に基づく。

写真1●林田氏が留学していたICPS(右)と、TAVI 術中の様子(左)(提供:林田氏)