EVAR後は定期的チェックが必要
 開腹手術群(160人)とEVAR群(1086人)の手術死亡率(術後30日以内の死亡率)を比較すると、開腹手術群1.3%、EVAR群0.1%で、開腹手術群の方が若干高いものの両群とも低く、どちらも安全性は高いといえる(表1)。5年間の追跡による生存率(中央値37カ月)についても、両群間で有意差は見られなかった(図2、P=0.7668)。

表1● EVARおよび開腹手術の患者背景と周術期成績(金岡氏による)

図2 ● EVARおよび開腹手術における生存率の比較(金岡氏による)

 EVARは低侵襲なので、表1に示すように開腹手術に比べて手術時間が短く(174分対321分)、出血量が少なく(300mL対1800mL)、術後入院期間が短い(5.6日対14.5日)などの利点がある。患者の負担が小さいのが最大のメリットだ。

 ただし、EVAR実施後には、動脈瘤内への血液の流入(エンドリーク)や脚閉塞・狭窄などの合併症が発生する可能性がある。このため、EVAR後は経過が良くても生涯にわたり年に1回程度のチェックが必要で、長期的には医療費がかさむ。

 実際に、開腹手術群とEVAR群で追加治療回避率を比べると、2群間で有意差は見られなかったが、EVAR群では術後徐々に追加治療が発生しており、5年後には約10%の患者に追加治療が必要だった(図3、P=0.4627)。

図3 ● EVARおよび開腹手術における追加治療回避率の比較(金岡氏による)

 その大半はエンドリークに対する治療であり、多くは血管内治療で対応可能で、開腹手術は1例のみだった。金岡氏は、「EVAR後は部分補修が必要となるケースが出てくるが、自動車の車検のように定期的なメンテナンスが必要という意味で、追加治療イコールEVARが失敗だったというわけではない」と話す。

開腹手術拒否群には福音
 EVARは低侵襲で治療成績が良好であるものの、長期成績はまだ不明だ。このため、長期成績が確立している開腹手術に代わり、EVARがAAA治療の第一選択となり得るのかについては、まだ議論中だ。

 「欧米で行われた開腹手術とEVARを比較するランダム化比較試験(RCT)の結果では、EVAR群は開腹手術群の手術死亡率(4.7%)を3分の1(1.7%)に低下させた。しかし、日本ではRCTが行われておらず、開腹手術の手術死亡率がそもそも低いこともあり、EVARは開腹手術不能例やハイリスク症例が適応となっている」と、金岡氏は説明する。

 「もはや、手術死亡率だけを比較する時代は過ぎた。手術死亡率が低いだけで良しとせずに、術後の患者のQOL回復を重視し、より低侵襲の施術を追及することこそ、医学の進歩といえるのではないか」(金岡氏)。

 AAAの大半は自覚症状がなく、腹部超音波検査などで、たまたま発見されるケースがほとんどだ。そうした患者の中には、侵襲の大きい開腹手術を拒否して治療を受けていない患者も少なくない。「開腹手術拒否群にとって、EVARという選択肢が増えることは福音だ。個人的には、EVARは第一選択と考えてよいと思う」と金岡氏は話している。