腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術(endovascular aneurysm repair;EVAR)は、2007年に企業製デバイスが保険収載されて以降、日本においても血管外科を中心に急速に広がりつつある。現時点におけるEVARの中期成績、今後の課題などをまとめた。


東京慈恵会医科大学
血管外科講師の金岡祐司氏

 「腹部大動脈瘤(abdominal aortic aneurysm;AAA)のEVAR施行数は、この6年間で1086例に上り、開腹手術による人工血管置換術(同期間160例)を大幅に上回っている。低侵襲治療に対する患者のニーズは高く、もはやEVAR抜きにAAAの治療を語ることは難しいだろう」と話すのは、東京慈恵会医科大学血管外科講師の金岡祐司氏だ。

 EVARは、大腿動脈をアクセスルートとしてカテーテルを挿入し、腹部大動脈瘤の部位でステントグラフトを拡張させ留置する治療法だ。ステントに固定されたグラフト(人工血管)が瘤内への血流を遮断し、瘤内の減圧と血行再建を同時に行う。

 この治療を実施できるのは、関連する国内10学会からなる「日本ステントグラフト実施基準管理委員会」によって認定された施設および医師。今のところAAA治療の第一選択は開腹手術による人工血管置換術で、EVARは開腹手術が困難なハイリスク症例が適応となっている。

瘤の解剖学的形状による制限も
 EVARの解剖学的適応をまとめると、図1のようになる。腎動脈下の大動脈(中枢ネック)が比較的真っすぐで、瘤までの距離が10〜15mm以上あり、径が約30mm以下。総腸骨動脈側の末梢ネック長も10mm以上必要で、アクセスルートとしての腸骨動脈径は6mm以上必要だ。 

図1●腹部大動脈瘤EVARの解剖学的適応(金岡氏による)

 日本で使用可能なデバイスは現在、全部で4種類ある(写真1)。各デバイスによって解剖学的適応には多少違いがあるが、最も重要なのは中枢ネックだという。「中枢ネックの長さが10〜15mm以上で、径が30mm以下であれば、多くの場合は施術可能だ」と金岡氏。

写真1●腹部用ステントグラフトの1例