今年4月22〜25日に神戸で開催された第54回日本リウマチ学会総会・学術集会では、2009年に欧州リウマチ学会(EULAR)と米国リウマチ学会(ACR)が2009年に発表したRA分類新基準をハイライトとして取り上げ、注目を集めた。同セッションを含めた今期学術集会の注目点について、日本リウマチ学会理事長で東京医科歯科大学膠原病・リウマチ内科教授の宮坂信之氏に聞いた。

 学会初日に、ACR/EULAR RA分類新基準をテーマにした特別企画セッションを開催した。ここでは新基準について、日本人のデータでその有用性の検証を試みた。前向きな取り組みとして国際的にも評価されるだろう。日本リウマチ学会では、新基準を日本に導入するための検証委員会(委員長は慶應大学教授の竹内勤氏)が設置されていて、秋までに一定の結論を出すことを目指している。

 シンポジウムの中では、初日午前に開催されたシンポジウム1「自己炎症症候群の新しい展開」は、リウマチ学の領域で非常に注目されている話題であり、タイムリーな企画だった。
また3日目の4月24日午前に開催されたシンポジウム3「リウマチ研究の最前線」は、日本が誇る基礎研究者がシンポジストを務め、リウマチの病因・病態の最新研究を報告、大変高いレベルのディスカッションが行われていた。

 特別企画では、先に述べた診断基準に関するセッションのほか、3日目午前に行われた「関節画像」セッションも注目を集めた。なかでも、同セッションの後半で取り上げられた関節エコーは重要だ。MRIとは異なり、超音波装置はどんな病院にもあり、プローブをつけかえれば関節用としても利用できるからだ。しかし、日本では、関節エコーのやり方および評価方法(メソッド)がまだ欧米のようには標準化されていない。このため、日本リウマチ学会では標準化委員会(委員長は北海道大学教授の小池隆夫氏)を作って技術の標準化を進めている。

 すでにEULARなどはリウマチ専門医資格取得用に関節エコーの教育コースを用意しており、テクニックを習得できる。日本リウマチ学会では、専門医養成のためにアニュアルレクチャーコースを開催しているが、できればこれに関節エコーのコースを併設したいと考えている。

 2011年の年次学術集会(会長は東邦大学教授の勝呂徹氏)では、企業展示の形で関節エコー手技のデモンストレーションを行う予定で、参加者に関心を持っていただきたい。また、本年度より支部集会開催時に関節エコー講習会を企画しており、2012年の学術集会でも関節エコーの手技・評価方法に関する講習会を行う予定だ。

 このほか、今期学術集会のワークショップから一般演題まで、全体を通してみると、医療機関における生物学的製剤の使用経験が蓄積し、日本における有効性と安全性についての具体的な実態が明らかになってきたと言える。単に使用するのではなく、生物学的製剤の“ベストユース”はいかにあるべきかという点について、今回の学術集会でリアルワールド(臨床現場)での実態が明らかにされ、様々な情報が得られるのではないか。

 日本で生物学的製剤の投与を受けているRA患者さんは、平均ではまだ20%に満たない。生物学的製剤は有用性も認識されてきたが、当然、限界もあり、適応を考えないと有用性を発揮できないばかりか有害事象もでてしまう。そのため、リスクマネジメントに精通しておく必要がある。

 なお、他の多くの学会も同様だが、これまで日本リウマチ学会では、大会長に決まった大学教授が、会長として資金を集め、学術集会のプログラムを決めてきた。このため、運営や内容にどうしてもばらつきがあった。本学会では、この方式を改め、2012年から年次学術集会を学会が直営する形に変更する予定だ。

プログラムもそのつど全部入れ替えるのではなく、継続的なテーマとタイムリーなトピックスをバランス良く、公平に入れるべきだろう。EULARやACRは既にこうした方式で運営している。

学会として教育研修活動に力を入れていく
 学会自体の活動に少し言及しておきたい。私が理事長になってから最も力を入れてきたのは、学会による教育研修事業への取り組みだ。従来は、年次学術集会でアニュアルレクチャーコースをやってきたが、それだけでは不十分だ。新たな事業として近く開始する予定のものとしては、海外への若手研究者派遣と交換留学生制度、前述の関節エコーの手技および評価法習得コースの設置、診療ガイドラインを作るためのシステマチック文献検索(SLR)とデルファイ法学習コースなどだ。これらを今後1年間で構築していくことが理事会で承認されており、学会公式サイトにも明記している。

 こうした事業のためには人手と資金が必要だ。患者さんやご遺族などからの寄付に加えて、欧米の学会が採用している制限なし教育資金援助(unrestricted educational grant)を要請しようと考えている。製薬企業に寄付を依頼するが、使い道は教育研修に限定するものの、使途は学会が自由に決める。ただし、会計はすべて公開するというものだ。既に理事会の承認が得られており、準備を進めている。

 日本の留学制度は貧弱で、旅費だけの援助(トラベル・グラント)や研究費の一部援助などが中心になっている。一方、米国のフェローシップは年限分の生活費と研究費をまるごと援助する奨学金を設定している。日本にはこのような若手研究者育成のきちんとした仕組みがほとんどないのが実情だ。

 海外のリウマチ学会では、EULARとACRが交換留学生制度を設けている。EULARが若手研究者を5人選び、指導者をつけてACRの学術集会に行かせる。学術集会が終わると、そのメンバーで米国内の代表的な施設を訪問する。次の年は逆にACRがEULARに若手を派遣するというものだ。このほど、EULARから日本リウマチ学会に同様の交換留学制度を設けようという申し出があり、実施する方向で準備を進めている。今後のリウマチ研究・診療を担う若手を派遣していきたい。

 ただし、課題の一つは英語力だ。日常会話や学会発表はできても、会議に参加して丁々発止とディスカッションするのは非常に大変だ。こうした場で。相手を納得させてねじふせるのは容易ではない。国際的にきちんと通用する若手世代を育成したい。

 日本は臨床試験もまじめにきっちり運用でき、質の高い成果を出せる。そうした長所を生かして日本オリジナルの研究成果を国際的に発信していく必要がある。我々は、市販後臨床試験などを通して実績を積むことで、ようやく欧米と対等な議論ができるようになった。しかし、医療IT化や臨床試験の実施(ドラッグ・ラグの解消)などでは、韓国に追い越されつつある。日本が取り残されかねないためにも、後追いではない積極的な活動が不可欠だ。