長崎大学医学部第一内科准教授の川上純氏らは、日本リウマチ学会の新基準検証委員会のメンバー施設として、診療録に基づく後ろ向き研究により、日本人RA患者におけるACR/EULAR新基準の妥当性について検討を進めてきた。同施設は以前から厚生労働省班研究の一環で、RA早期診断基準の検討を行い、MRI画像診断に基づく長崎スコアを提唱していることで知られる。新基準の検討結果は、今年4月に開催された日本リウマチ学会の緊急セッションで報告された。ここでは川上氏に、JCRでの報告を踏まえた日本人における新基準の有用性や問題点について聞いた。

 われわれは、今年4月に神戸で開催された日本リウマチ学会で、自施設の患者のうち、1987年のACR RA分類基準を満たさない診断未確定早期関節炎(UA)コホート129例を対象として、2009年に発表されたACR/EULARのRA新分類基準の妥当性を検討、結果として、新基準は感度62.7%、特異度77.8%、陽性的中率79.8%と高い診断精度が得られたことを報告した。

 新基準の価値は早期の診断未確定関節炎患者に対する診断精度の高さにある。今回の検討では、登録時に1987年基準を満たしていない診断未確定早期関節炎の患者を対象とした。言い換えれば、旧基準では1例もRAと判定されない患者群を対象とした検討だ。その中でこれだけの診断精度が得られたことは特筆に値する。今回、日本リウマチ学会で報告した施設は、いずれも新基準に良い印象を持ったようだ。X線像と簡単な検査、身体所見だけで十分な診断精度が得られる点で、新基準の有用性は高いと言ってよい。

 では臨床現場での導入の難易度はどうか。新基準では、まず関節腫脹の有無を調べる必要がある。これが意外に難しい。医師が関節に腫脹がないと判断したら、その時点でRAは否定される。関節腫脹が1カ所以上あれば、他の疾患と鑑別し、X線をとる。

 当施設ではその後に症例を追加して199人の診断未確定早期関節炎を新基準で評価した。リウマチ専門医の診断で、199人中61人はその時点で関節腫脹なしとされた。関節腫脹の判断は主観があるので、実際にはかなり難しい。

 早期関節炎患者ではほとんどX線所見はない。当施設の199人(その後の検討で追加)でも、X線所見があったのは3人であり、ほとんどは新基準のスコアアルゴリズムに進めることになった。

 スコアアルゴリズムは優れている。関節所見で小関節炎に重きが置かれていること、抗CCP抗体が含まれていることは評価できる。

 ただし、他の疾患を鑑別しきれずにスコアアルゴリズムに入ってしまうと、擬陽性になってしまう可能性は高い。判断が難しい疾患の一つがシェーグレン症候群だ。RAと同様、関節炎を呈することがあり、自己抗体も高力価であることが多い。シェーグレン症候群でもリウマトイド因子は50%程度が陽性になる。高力価ならそれだけで3点。さらに小関節1カ所に腫脹があり、数カ所の関節痛があれば、スコアが6点に達してしまい、RAと診断される。そのため、シェーグレン症候群がベースにあるのではないかということにたえず注意する必要がある。同疾患を疑うときは抗CCP抗体を併せて測るとよさそうだ。

新基準のスコア6点以上で迷う場合はMRI・超音波検査も考慮すべき
 シェーグレン症候群に限らず、スコアによる判定後もなお、診断に迷う場合はあり得る。その場合には画像診断を併用すべきではないだろうか。日本の医療環境ではMRIや超音波診断装置が身近にあることが多い。「スコアは6点以上だがリウマチかどうか判断しかねる」といった症例では、関節の超音波診断による活動性の滑膜炎やMRI画像による骨病変の確認を行い、所見があれば、その時点でRAの治療介入をすべきだろう。逆に、画像所見が乏しければ、経過観察してもよいのではないか。

 当施設では、MRI検査を含む長崎大学スコアによる検討も併せて実施したが、感度、特異度、陽性的中率などは、ACR/EULAR新基準と遜色ないものだった。

 長崎スコアについて、どこでもMRIは使えるわけではないといった批判があるのは承知しているが、判断に迷う場合には価値がある。超音波はパワードプラを用いると活動性滑膜病変がよく分かる。MRIでは骨髄浮腫を中心にみていけばよい。各々の施設で使い分ければよいのではないか。

統一的な尺度で日本人のエビデンスを構築したい
 今後は、リウマチ専門医がいる各エリアで、施設を超えて新基準をもういちど評価すべきだろう。その際、ばらばらで症例数だけ増やすのではなく、学会が音頭を取るなどして、統一したエントリー基準を決めることが大切だ。たとえば発症して半年以内の関節炎患者をすべて対象とし、6点以上ならタイトコントロールをして2年後のアウトカムをみるといった研究が必要ではないだろうか。

 新基準に基づく治療介入の妥当性について、十分な報告が出るのはおそらく数年後になるだろう。アウトカムが非常に良かったということが分かって初めて、確からしい評価ができる。

 ただし、新基準で治療介入の必要性を判断しても、MTXのみでよいのか、それとも生物学的製剤が必要になるのかは判断できない。現段階では、実際に治療を試み、反応をみる必要がある。この点は今後の課題だ。