日本では関節リウマチ(RA)治療の最前線をリウマチ内科と整形外科が支えている。関節に腫脹や痛みがあるときには、まず整形外科クリニックに駆け込む患者も少なくない。
 整形外科医は、関節治療や手術適応の見極めなどの点で、RA診療の担い手として、主導的な役割を果たしてきた。半面、呼吸器疾患などの合併症が起きた時の対処への不安から、メトトレキサート(MTX)や生物学的製剤による近年のRA薬物治療に対しては、必ずしも積極的ではないとの指摘もある。
 しかし、地域で内科、整形外科の開業医とリウマチ専門医が連携することで、それぞれの優位点を生かし、最新の治療を受けられる環境を構築することが可能になる。こうした取り組みを自ら推進している岡山大学大学院生体制御科学専攻機能制御学講座人体構成学分野准教授の西田圭一郎氏に話を聞いた。

 最新のRA治療では、(1)関節破壊を最小限度に抑えられるタイミング「治療の窓:Window of opportunity」を逃さずに早期診療し、必要なら十分な治療を行う。(2)治療開始後、有効性や副作用などを確認し、必要があれば薬剤の増量、または薬剤の切り替えを行う「タイトコントロール」、(3)治療目標を明確にし、その目標に向かって治療を行う「Treat to Target」、などの指針に従って進めるべきとされる。しかし、これを開業医が1人で実施するのは難しい。他の医療機関との連携は不可欠となる。

 診断未確定関節炎の患者のうち、1年後にRAと診断される比率は30〜50%程度とされる。他は別の診断に至ったか、1年後も依然として診断未確定の患者が占める。そのため、早期診断をあせりすぎると、RAでない人にRAの治療をしてしまうことになる。逆に慎重すぎると治療の好機を逃す。鑑別が難しい場合、感度の高い診断法や診断技術ももちろん大切だが、なるべく多くの専門医がかかわることが重要だ。

 ACR/EULARのRA分類新基準に基づく診断でも、他の疾患による関節炎との鑑別は重要だ。鑑別を要する頻度が高い疾患としては、RA以外の膠原病や変形性関節症(OA)などがある。一般に膠原病の鑑別は内科医が、OAなどは整形外科医が得意とする領域と言える。

 ほかに、結核や非定型好酸菌症、通常の細菌感染でも関節の腫脹が起きることがある。感染性関節炎の治療法はRAと全く異なり、免疫抑制やステロイドの使用は適さない。

 頻度は少ないが、整形外科系の腫瘍が関節近傍にでき、腫脹と見誤ってRA治療を開始してしまうことがある。例えば腱鞘巨細胞腫は、腱鞘が腫れたり、関節近傍で骨を破壊するため、RAと症状が似ている。また、色素性絨毛性結節性滑膜炎(PVS)は膝に繰り返し水が貯まり、炎症を起こす。いずれも良性の腫瘍だが、鑑別診断の候補になる。これらの関節感染症や腫瘍については、整形外科医を中心に治療することになるだろう。

地域連携で整形外科医も安心してMTXを使える体制作りを
 RAの典型的症状がいくつも現れている“わかりやすい”患者さんは、非専門医でも問題なく診断できる。しかし、腫脹関節が1個、リウマトイド因子が陰性など、ごく初期で症状が少なく、決め手に欠ける症例は診断が難しく、大学病院などに紹介されることが多い。また、特に整形外科の開業医は、呼吸器合併症などへの不安からMTXや生物学的製剤の投与をためらうことが多いとされる。

 しかし、地域でリウマチ専門医や呼吸器内科医などとの連携があれば、安心して最新の治療を進めることができる。例えば、MTX増量が適切と考えたとき、患者にリウマチ専門医へ相談を勧めることで、責任の分担が可能になる。副作用など有害事象がみられた時も、いったん開業医が受け止め、専門医に連絡することができる。

 開業医の多くは1人で診療しているので、合併症や重篤化の際の労力は尋常ではない。そこを中核となる医療機関が受け持つ。ただしギブアンドテイクの原則から、専門医が時間をかけなくていいと判断された患者は受け持ってもらう。岡山県では、このほど最前線でリウマチ診療を手掛ける開業医を支える「岡山リウマチネットワーク」が発足した(本稿末尾の別掲記事を参照)。

 リウマチ専門医は、3カ月に1回など、開業医から要請があったときだけ患者さんをみて、診断に難渋する例や重篤例にじっくり時間をかけて診療できるようになればよい。日本では専門医に診てもらえば安心だと、開業医で十分対応できる症状の軽い患者さんが大学病院などに押し掛ける。医療連携でこうした状況を変える必要がある。

 ただし、こうした連携の実現には、患者側の理解も欠かせない。病診連携の仕組みへの理解を社会に広める必要がある。患者としては症状を軽くしてくれた医師にかかり続けたいだろうが、専門医の数が未だ不足していることと医療連携の重要性を理解してもらい、いつでも相談できる近くのかかりつけ医に薬を出してもらいながら、調子が悪くなったときにはかかりつけ医に相談の上で専門医にかかる―こうした流れが定着すべきではないか。