2009/11/13

EULAR RA Recommendations 2

DMARDsとステロイドのエビデンス

中沢 真也=日経メディカル別冊

 欧州リウマチ学会(EULAR)がこのほど発表した関節リウマチ(RA)薬物治療に関する勧告(リコメンデーション)案は、複数のチームが分野別に文献レビューを実施してエビデンスを集約、勧告案策定チームに答申して完成した。本稿では、抗リウマチ薬(DMARDs)とステロイド(原文中ではすべてグルココルチコイド)のエビデンスについて概要を紹介する。

フランス・パリ第5大学のCecile Gaujoux-Viala氏

 DMARDsについては、フランス・パリ第5大学のCecile Gaujoux-Viala氏らのグループが系統的レビューをもとにエビデンスを集約した。研究グループは、2009年1月までにMedLine、Embase、コクランライブラリーに登録されている論文から759件を選び、このうち、条件を満たした98研究を分析した。有効性を分析したのは表1に示す14種類の合成リウマチ薬である。

 分析ではまず、腫脹関節数(SJC)に対するMTXと他のDMARDsの有効性を単剤同士で比較した。その結果、スルファサラジン、オーラノフィン(経口金製剤)、アザチオプリンに対しては、MTXの方が、有効性が有意に高いことが示された。レフルノミドについては、MTXと有意な差を認めなかった(4件の研究)。

表1 14種類のDMARDs

 DMARDs治療歴のない患者について、EULAR改善基準を評価指標として、MTX単剤とMTX+DMARDs併用を比較したところ、有意差は得られなかった(3件の研究)。

 また、MTXに対して良好な反応が得られない患者に対し、MTX単剤とMTX+DMARDs併用を比較したところ、併用の方がSJCに対する有効性は高かった(3件の研究)。しかし、有害事象や有効性の欠如などの理由による投与中止については、単剤が良好とする研究と併用が良好とする研究があった。

 研究グループは次に、MTX以外のDMARDsをプラセボと比較した。レフルノミドとプラセボの有効性を、SJCを指標として比較したところ、レフルノミドは有意に有効性が高かった(3件の研究)。また、注射金製剤(3件の研究)、シクロスポリン(3件の研究)については、有意差は得られなかったが有効である傾向が示された。

 アザチオプリンについては、症例数が非常に少ないものの有効性が示された。オーラノフィンをプラセボと比較した研究では有意差は得られず、ミコフェノール酸についてはデータがなかった。また、ミノサイクリンとタクロリムスについては、「データは限定的ながらある程度の有効性が示された」という。
 Gaujoux-Viala氏らは、これらの結果から、次のような結論を導いた。

(1)MTX単剤は他のDMARDs単剤より有効(レフルノミドはMTXと同等)。
(2)DMARDs治療歴がない患者では、MTXと他のDMARDsの併用は、有効性の点でMTX単剤と有意差が認められない。したがって、有効性と有害性のバランスを考慮するとMTX単剤が好ましい。
(3)レフルノミド、スルファサラジン、注射金製剤はプラセボに比べて有効。
(4)アザチオプリン、シクロスポリンもプラセボに比して有効だが、忍容性に問題があるため注意が必要。

ステロイド:罹患早期のDMARDs併用で有効性

オランダ・マーストリヒト大学病院のSimone Gorter氏

 ステロイドについてのエビデンス集約は、オランダ・マーストリヒト大学病院のSimone Gorter氏らのグループが担当した。MedLine、Embase、コクランに登録された文献レビューは、次の4つの問題点に対するエビデンスを得る目的で実施された。

(1)早期RA患者と進行RA患者でステロイドの有効性は異なるか。
(2)DMARDs使用開始から効果がみられるまでの間、橋渡し的にステロイドを用いるブリッジング治療は有効か。
(3)ステロイドの投与タイミングが重要か。
(4)どのような用量漸減戦略が適切か。

 早期/進行RA患者に対するステロイドの有効性について、2件の研究が登録されていた。1件はRA罹患歴2年未満の患者を対象として、低用量ステロイド使用群と非使用群を比較し、使用群では構造的損傷がより少ないことを示していた。もう1件は罹患歴2年超の患者を対象としており、低用量ステロイド使用群では非使用群に比べ、症状軽減がみられた。

 ブリッジング治療については4件の研究があり、いずれも低用量ステロイド療法、またはステロイドパルス療法をMTXなどと併用したもので、ステロイドによって症状軽減が認められていた。

 Gorter氏らは、ステロイドとDMARDs併用についての文献レビューも実施した。DMARDs単剤とステロイド併用を比較した4件の研究では、いずれも併用群で症状改善と構造的損傷の進行が有意に抑制されていた。2剤以上のDMARDsについてステロイド併用の有効性を調べた3件の比較研究では、DMARDsだけで十分に有効で、ステロイド追加で明らかな差は得られなかった。

 ステロイド投与のタイミングについては3件の研究がみつかった。2件は夜投与と朝投与を比較した研究で、夜投与の方が症状軽減の程度が大きかった。もう1件は遅延放出型ステロイド剤と通常のステロイド剤を夜間に投与して朝のこわばりを比較した研究で、遅延放出型の方が高い有効性を示した。

 ステロイドの減量については、比較研究は見つからなかったが、研究グループは少数例による2件の研究をレビューした。1件は注射金製剤と低用量ステロイド併用患者を対象としたもので、7週間かけてステロイドを10mgから0mgまで減らしたところ、半数超はDAS値が再び増加した。別の1件は、1年以内にステロイド用量をゼロまで減らした群と、用量漸減を行わなかった群を比較した研究だ。用量漸減群で約6割に関節症状の増加がみられた。一方で、ステロイド用量維持群でも骨密度に問題は起きなかったという。

 Gorter氏らはこれらの文献レビューをもとに、次のように結論した。

(1)進行RA患者に対する低用量ステロイド投与は症状軽減に有効
(2)早期RA患者に対する低用量ステロイド投与は構造的損傷の進行を抑制する。
(3)早期RA患者と進行RA患者でステロイドの有効性が異なることを示すエビデンスは不十分。
(4)DMARDsとステロイドを併用すると症状軽減と構造的損傷の進行抑制がみられる。
(5)ステロイドの投与タイミングは重要とみられる。
(6)ステロイドの用量漸減についての研究は十分には行われていない。ただし、投与を完全に中止するのは、しばしば非常に困難だ。

 興味深いことに、ステロイドに関する上記のような分担研究の結論と、最終的な勧告案にはずれがあるようにみえる。勧告案ではステロイドに関して、「初期段階にDMARDsとの併用で短期的に使用すると有効」という項目と、「寛解が維持されている場合にはステロイドを減量すべき」という項目の2つある。2番目の項目は、Gorter氏らの結論には含まれていないようだ。勧告案を最終的にまとめた専門家パネルが調整のうえで加えたとみるのが自然だろう。

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