2009/10/13

EULAR RA Recommendations 1

EULARがRA治療に関する初の包括的勧告案を発表

診断後、早期に治療開始、迅速な寛解目指す

中沢 真也=日経メディカル別冊

オランダ・マーストリヒト大学病院のRobert Landewe氏

 欧州リウマチ学会(EULAR)は、2009年6月にコペンハーゲンで開催された年次学術集会(EULAR 2009)で、関節リウマチ(RA)の薬物治療に関する勧告(リコメンデーション)案を発表した(発表者はオランダ・マーストリヒト大学病院のRobert Landewe氏、写真右)。生物学的製剤を含むRAの薬物治療について、欧州初の包括的な勧告となる。発表後、パブリック・コメントを募集し、必要な修正を加えた後、まもなく正式な勧告として発表される予定だ。

 勧告案の最大の特徴は、早期からの積極治療によって、できるだけ早く寛解を目指すという明確な治療目標を示していること。この目標を実現するための具体的な治療指針を提示した。既存の勧告やガイドラインにない新たな概念として注目されるのは、減薬についての推奨が導入されたこと。寛解が維持された場合の薬剤減量について、薬剤別に方針を提示した。この減薬の概念は、オランダで実施されたBeSt試験の結果に基づいている。

 勧告案では、個別の治療指針とは別に、RA治療について、次の4つの「総合原則」を提唱している。
(1)RA患者に対しては、最善の治療を目指すべきである。
(2)RA治療は、リウマチ専門医が中心になって行うべきである。
(3)治療における判断は、患者と専門医が合意のもとに行うべきである。
(4)RAでは、医療コストも生産性の損失も莫大なので、専門医は治療の際、両方を考慮すべきである。

 RA治療は日進月歩なので、最新の知見に基づき、専門医がより積極的な治療をすべきであること。RAが進行すれば、就業困難や介護の必要性など、疾病による損失が大きい半面、薬物治療コストも高額なため、医師は患者と合意の上、治療を進めるべきだ、という大きな方向性を示したものだ。

 勧告案の治療指針は15項目から成り、DMARDs、ステロイド、生物学的製剤の各薬剤別に、使用開始、切り替え、休止(減薬)の時期とその判断基準を示している。全体的な治療戦略に関する項目もいくつか含まれる。
 各項目には、それぞれエビデンスレベルと推奨グレードが示されている。項目数は多いがシンプルで分かりやすく、臨床の場で有効・安全な治療を選択する際の有用な指針になりそうだ。

5分野でエビデンスを収集して勧告を構築
 EULARは勧告案の策定に当たり、5つの作業グループを設置し、分野ごとにシステマティック・レビューを実施。有効性、安全性、治療方法、管理手法についてのエビデンスを抽出した。

 各作業グループの担当分野は、(1)合成抗リウマチ薬(DMARDs)による治療(ステロイドを除く)、(2)ステロイド治療(他薬剤との併用含む)、(3)生物学的製剤による治療、(4)治療目標達成のための治療戦略、(5)医療経済の5つ。各作業部会は、今年4月までに勧告策定委員会(パネル)に答申した。

 本勧告案の策定は、実作業期間が約7カ月という短期間で進められた。2008年9月に策定の方針を決定、同年12月にキックオフ会議、今年4月までに基本的な作業を終え、2カ月間で調整を終えて、勧告案の発表に漕ぎ着けた。昨年7月に米国リウマチ学会が発表した「関節リウマチにおける生物学的製剤と他のDMARDsの使用に関する2008年勧告」を受け、今年のEULAR 2009を目指して作業を進めたもようだ。

 実際、今回の勧告案は年次集会にかろうじて間に合った。同学会のWebサイトで発表された当初の学会プログラムには掲載されていなかったため、日本から参加した研究者の中には、発表があったのを知らなかった人も少なくなかった。急きょセッション開催を決めたために施設の片隅の小さな部屋での発表となった。一時は入りきれない参加者と制止する警備員との間で険悪なやりとりもみられたほどだった。
                                            (続く)

EULARが発表した関節リウマチの薬物療法に関するリコメンデーション案

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