2009/10/23

HAQ不良リスクが低いRA患者以外は最初から積極的な薬物療法を選ぶべき

宇田川 久美子=医学ライター

オランダ・ライデン大学のL Dirven氏

 関節リウマチRA)患者の長期的な関節機能は、治療早期のHAQコントロールの成否と関連する可能性が指摘されている。オランダ・ライデン大学のL Dirven氏らは、この治療早期のHAQコントロール不良につながる危険因子として、メトトレキサートMTX)単剤での初期治療を同定。HAQ不良リスクが低いRA患者(HAQや疼痛関連VASリッチー関節指数RAI)のすべてが低値)以外は、最初から併用療法を開始する「トップダウン治療」を行うべきであることを示唆した。同大学が推進するBeSt試験の患者データを解析した研究で、米フィラデルフィアで開催された米国リウマチ学会年次学術集会ACR2009)で発表された。

 BeSt試験は、早期・活動性RA患者を対象に新旧4つの治療戦略を比較・検討した大規模臨床試験である。同試験における長期の追跡で、早期RA患者に対し、最初から高用量ステロイドインフリキシマブとMTXを併用する「トップダウン治療」と、MTX単剤から開始して徐々に増量や併用を行う「ステップアップ治療」を比較したところ、「トップダウン治療」の方が関節破壊の抑制効果に優れることが明らかになっている。

 一方、どちらの治療戦略を選択した場合も、1年目以降のHAQは同じように改善されていたが、トップダウン治療群の方が改善が早く、治療3〜6ヵ月後のHAQには両群に有意な差がみられたことから、この時期のHAQコントロールの成否が将来の関節機能保持のカギであるとの可能性が指摘されていた。

 そこでDirven氏らは、BeSt試験の患者データの単変量解析と多変量解析を行い、治療早期のHAQコントロールと相関する因子の同定を試みた。その結果、単変量解析では初期治療や性別、DASなど10数項目が予測因子として浮上。さらに、多変量解析の結果、ベースライン時のHAQと疼痛関連VAS、RAIの高値が負の予測因子、多剤併用による初期治療が正の予測因子として同定された。

 Dirven氏らは、これらの因子を組み合わせたマトリックスモデルを作成し、個々のケースおける将来のHAQ不良リスクを算出した。このモデルによる予測精度は、ROC曲線の曲線下面積(AUC)が0.76、陽性的中率71%、陰性的中率74%で、十分に信頼に足る予測精度を有しているという。

 このモデルの分析で、たとえばベースライン時のHAQが1.4〜2、疼痛関連VASが>60、RAIが10〜16の患者に対し、MTXと高用量ステロイドの併用による初期治療を選択した場合、3ヵ月後のHAQが不良(≧1)となる可能性は41%と推測される。しかし、同じ患者にMTX単剤での初期治療を選択した場合には、HAQ不良の可能性が70%に高まることが示唆された。

 他方、それぞれのリスクカテゴリーの患者に対してトップダウン治療を行った場合のNNT(number needed to treat)を算出すると、HAQ不良リスクが中〜高リスクの患者より低リスクの患者で、むしろNNTが高くなる(治療効果が低くなる)傾向がみられた。

 Driven氏らはこれらの分析から、HAQや疼痛関連VAS、RAIのすべてが低く、HAQ不良リスクの低い患者ではトップダウン治療を行う必要はないが、中〜高リスクの患者に対しては、最初から併用療法を行う方が治療早期のHAQコントロールには有用であり、長期的な関節機能の保持も期待できると報告。採用したモデル分析について、「治療不十分と過剰治療のリスクを一目で把握できるため、初期治療の選択に有用」(同氏)とした。

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