患者はなぜMTXを使わない(使えない)のか?

 このようにTNF阻害薬については、MTX併用の有効性が明らかになっている。それにもかかわらず患者がMTXを使用しない(できない)のはなぜか。

 多くの場合、有害事象の発現が原因になっているようだ。まず、妊娠中の患者や肝機能障害などを有する患者では、MTXは禁忌となる。また、いったん使用を開始しても、消化管障害や肝機能障害、あるいは皮膚、神経系などの有害事象が発現すれば、医師または患者の判断で使用を断念することがある。

 薬剤販売データについて分析したカナダの研究では、初めて生物学的製剤を処方され、6カ月を超えて使用している患者の実に58%が、処方されたMTXを購入していないと報告している。質の高い臨床試験でも有害事象によるMTX中止が5〜15%の患者に見られるほか、3〜12.7年の追跡が行われた観察研究では、有害事象による使用中止が最高で77%になっていた。

 服薬不遵守、あるいは有害事象が現れた患者については、(1)葉酸や制吐薬を投与する、(2)筋注または皮下注処方のMTX(我が国では抗癌剤としてのみ承認)に切り替える、(3)カウンセリングや教育を実施する、(4)併用薬を他のDMARDsに切り替える、などの方法がある。

トシリズマブでは単剤投与でMTX併用と同様の有効性が示されている

 トシリズマブでは、単剤で用いた場合でも、疾患活動性の低減効果と骨破壊の進行抑制効果は、MTXやその他のDMARDsに優ることが示されている。また、構造的関節損傷リスクが高い患者において、損傷の進行をより遅らせるという報告もある。

 MTXと併用した場合と単剤で用いた場合のトシリズマブの有効性を様々な評価指標で検討したACT-RAY試験では、24週までの追跡ではMTX併用群の優位性はほぼ認められず、52週では臨床的寛解(DAS28<2.6)と画像的進展でMTX併用群が有意に良好だった。

 生物学的製剤またはDMARDsを使用していても疾患活動性が高い状態にある患者を登録し、実臨床に近い条件下でトシリズマブ単剤とトシリズマブ+DMARDsの安全性を比較した試験では、両群に同様の症状軽減が見られた。

 トシリズマブ単剤投与の有効性の持続期間を検討した研究では、5年以上にわたって臨床的に意義のある有効性低下は認められなかったと報告している。

 MTX不忍容またはMTXの使用を継続できなかった患者を登録し、トシリズマブ単剤とアダリムマブ単剤の有効性を直接比較したADACTA試験では、臨床徴候と症状の軽減において、トシリズマブの優越性が示された。

 ネットワークメタ分析によると、トシリズマブ+MTXの疾患活動性に対する有効性は、他の生物学的製剤+MTXと同様であること、トシリズマブを単剤で用いた場合の有効性は、TNF阻害薬の単剤投与に優る可能性が高いこと、トシリズマブ+MTXとトシリズマブ単剤の有効性は同様であることが示唆されている。

 Emery氏らは、以上の分析を基に、「生物学的製剤とMTXの併用は、MTX投与で症状改善が認められないRA患者の標準的治療だが、少なからぬ患者が処方されたMTXを服用しない(あるいはできない)という現実がある。そのため、リウマチ専門医は、生物学的製剤の単剤療法が時として不可欠であることを認識すべき」と指摘した上で、「単剤療法に関するエビデンスはまだ不十分だが、最適な治療を行うためには、データの蓄積が欠かせない」と結んだ。

 本研究の原題は、「Biologic and oral disease-modifying antirheumatic drug monotherapy in rheumatoid arthritis」。現在、全文をAnnals of Rheumatic Disease誌サイトのこちらから閲覧できる。