東北大学血液免疫科の石井智徳氏

 抗IL-6受容体抗体製剤トシリズマブ(TCZ)の使用が、予後不良因子を有する関節リウマチ(RA)患者の関節破壊の進行を抑制することが実臨床における検討で示された。東北大学血液免疫科の石井智徳氏らが、京都で開催された第57回日本リウマチ学会で発表したもの。

 対象は、東北6県の34施設が参加するMichinoku Tocilizmab Study Groupにおいて、2008年5月から2010年12月までにTCZの投与を開始した症例のうち、X線評価をし得たRA患者130例(女性89%)。ベースラインの平均年齢は59.7±12.6歳、平均罹病期間は10.8±9.6年。生物学的製剤使用歴を22.3%が有し、MTX併用率は37.7%、ステロイド併用率は59.2%、リウマトイド因子(RF)は182.2IU/mL、抗CCP抗体は139.4U/mL、疾患活動性の指標となるDAS28-ESRは4.8±1.2だった。

 評価項目は、X線画像に基づく骨びらんスコア、関節裂隙狭小化(JSN)スコア、それらを合わせたmodified 総Sharpスコア(mTSS)のTCZ投与開始時から52週までの変化。今回の試験では、ベースラインのRF、抗CCP抗体、DAS28-ESRの値で高値群と低値群に分け、TCZの関節破壊抑制効果を比較検討した。

 RF値別の検討では、日本リウマチ学会が正常値15IU/mLの3倍超を高値陽性と定義しているので、45IU/mLを超える40例(高値群)とそれ以下の21例(低値群)で比較した。

 ベースラインからの骨びらんスコアの進行度は高値群0.3、低値群-0.2、JSNスコアは0.3と0.4、mTSSは0.7と0.3で、両群間に有意差は認めなかった。mTSS進行度0.5以下の構造的寛解の達成率も高値群80.0%、低値群71.4%で有意差はなかった。DAS28-ESR、圧痛関節数(TJC)、腫脹関節数(SJC)のいずれも、高値群と低値群ともに6カ月後には著明に改善され、12カ月後にはさらに改善された。

 一方、DAS28-ESRの6カ月後と12カ月後、TJCの6カ月後の数値では、それぞれ高値群と低値群で統計学的有意差を認めたが(P<0.05、P<0.05、P<0.05)、TJCのベースラインと12カ月後およびSJCの6カ月後と12カ月後の比較では両群に差はなかった。

 抗CCP抗体値別の検討では、正常値とされる4.5U/mLの3倍に当たる13.5U/mLを高値陽性とし、それを超える32例とそれ以下の11例を比較した。抗CCP抗体高値群の骨びらんスコアの進行度は-0.2、mTSSは-0.1で、低値群1.3と3.3に対していずれも有意に低かった(P=0.0349、P=0.0368)。JSNスコアの進行度には両群に差はなかった。構造的寛解達成率は高値群81.3%、低値群63.6%で、両群間に有意差を認めなかった。疾患活動性については、DAS28-ESR、TJC、SJCのいずれも、6カ月後および12カ月後改善度に両群間に差はなく、ほぼ同等に改善された。

 DAS28-ESR値別の検討では、高疾患活動性の指標となる5.1を超える47例とそれ以下の69例を比較した。高値群の骨びらんスコアの進行度は0.2、JSNスコアは0.4 、mTSSは0.6で、低値群の0.1、0.6、0.7と有意差はなかった。構造的寛解達成率も高値群61.7%、低値群76.8%で有意差はなかった。DAS28-ESRでは6カ月後に両群間に有意差を認めたが(P<0.05)、12カ月後には両群とも改善された。TJCとSJCは6カ月後および12カ月後の改善度に両群間で差はなく、ほぼ同様に改善された。

 石井氏は以上の結果を受け、「日常診療において、TCZは将来的な関節破壊につながるとされる予後不良因子を有する患者においても、高い骨関節破壊抑制効果が期待できる」と結論した。