関節リウマチはいったん発症すると10〜20年といった長期間、治療を継続する必要がある。そのため、医療費が患者や家族に重くのしかかる。2003年以降、日本でも関節リウマチ患者への投与が可能になった生物学的製剤は、多くの患者に対して高い有効性を発揮し、リウマチ医療を劇的に改善したが、その半面、薬剤費は高い。

 表1に主な非生物学的製剤の抗リウマチ薬、表2に生物学的製剤の薬価と、標準的な用法・用量における1日当たり、および1カ月(4週間)当たりの薬剤費(先発品、維持量投与の場合)を示した。

 非生物学的製剤では、新たに国内でも製造販売承認されたヤヌスキナーゼ阻害薬のトファシチニブ(5月28日時点で未発売)が生物学的製剤との類似薬効比較方式により、1日当たり5078円、1カ月当たり14万2184円と最も高く、次いで免疫抑制剤のタクロリムスが1日当たり2465.40円(3mg/日)、1カ月当たり6万9031.2円となっている。

 その他の製剤は、関節リウマチのアンカードラッグとされるメトトレキサート(MTX)が1日当たり128.36円(6mg/週)、サラゾスルファピリジンは136.80円(1g/日)、ブシラミンは211.50円(300mg/日)、レフルノミドは301.00円(20mg/日)などとなっている。

表1 主な抗リウマチ薬(非生物学的製剤)の薬剤費

 これに対して生物学的製剤の1日当たり薬剤費をみると、2013年3月に新投与経路製剤として製造販売承認されたトシリズマブ皮下注製剤(シリンジタイプ)が1日当たり2718円、同オートインジェクタータイプが2729円と最も低価格だった。次いで、2012年4月に薬価改定されたトシリズマブ静注製剤が3146円、インフリキシマブ3591円、アバタセプト3819円、エタネルセプト4429円、アダリムマブとゴリムマブがともに5078円、2013年2月に製造販売承認されたセルトリズマブ・ペゴル5093円の順となっている(体重、増量、投与間隔短縮などによって変わる場合もある)。

 近年の研究により、複数の生物学的製剤で、発症後、早期に薬物治療を開始すると骨破壊をより効果的に抑制でき、関節の変形などの障害を長期にわたって抑制でき、患者QOLを維持できることが示されている。その半面、障害がない段階から治療を開始するため、障害者認定の対象にならず、高齢者でなければ3割負担による支払いを余儀なくされる。

表2 生物学的製剤の薬剤費

 このため、患者の自己負担は年間数10万円にもなり、経済状況によっては生物学的製剤による治療を断るケースが頻発しているのが現状だ。有効な治療の機会をみすみす逃す患者が少なくないことは、社会的にも大きな問題といえる。その結果として障害が発生すれば、就業機会の損失や介護負担を、家族や社会が負うことになる。投与量や所得などによっては高額療養費制度の適用を受けることができる場合もあるが、医療経済的な観点からも、さらなる解決策が必要なことは明らかだ。

(中沢 真也=日経メディカル別冊)