患者評価の組み入れは必要だが寛解の評価因子は疾患活動性に限るべき
 論文コメント:慶應義塾大学医学部リウマチ内科 金子祐子氏

慶應義塾大学リウマチ内科の金子祐子氏

 Aletaha先生、Studenic先生らの研究は患者と医師の全般評価でなぜ差が出るかを報告したものです。詳細な分析を行い、結果に対する検証も十分で、研究グループの解析力の高さを感じます。

 PGAとEGAの差について解析する場合、どの程度の差があった場合に乖離が起きていると判断するかは重要です。私も同じテーマで研究・報告していますが、20mmを超えた場合、乖離ありとしました。既存の研究でも概ね20〜25mmとしていますが、本研究では5mmです。これは筆者らが、医師と患者の評価はより厳密に一致すべきという考え方をとっていることを示唆しています。

 今回の報告では、患者は疼痛、医師は腫脹関節数(SJC)を重視していることについて、きちんとしたデータで明らかにしています。患者コホート平均のSJCが3.2であり、その場合、疼痛VASが12mmを超えているとPGAがEGAより悪化することを示しています。

 12mmは寛解基準の10mmに近く、疼痛VASはPGAの大部分を説明するわけですから、患者にとってPGA=10mmという境界は意義があるのかもしれません。疼痛VASがわずか12mmを超えるとPGAがEGAを上回るということは、見方を変えれば、医師が患者の痛みに鈍感ということを示しているとも言えます。

 しかし、寛解は疾患活動性の評価であり、患者の苦しみや身体の不自由とは切り離して考えるべきだと私は思っています。

 最近の臨床試験では、疾患活動性の指標としてDASではなく、SDAIを用いるケースが多くなっています。しかし、Booleanを指標にしている臨床試験はあまり見かけません。

 私たちはBoolean基準を用いる場合、PGAの境界をどの程度にすべきかについて、今年の日本リウマチ学会で報告しました。慶應大学病院を外来受診している1402人を対象とした検討で、31%が現在のBoolean寛解基準を満たしていましたが、同基準の4項目のうち1項目だけが基準外だったのは対象者の31%で、その87%はPGAだけが基準外(>1)でした。

 PGAの分布を見ると、10〜20mmに入った該当患者は状態が良い場合が多く、20mmまではCRPやSDAI CDAIも大きな変化がないこと、30mmではCDAIが急に上昇することなどから、20mmを境界とするのが適切ではないかという結論としました。

 この報告では、罹病期間や年齢が上がるとPGAが悪化することも提示しました。これは非炎症性の痛みや身体の不自由さがPGAの悪化に関与している可能性を示しています。

 とは言え、患者さんの評価は疾患活動性の因子として必要だと思います。Aletaha先生らは、医師がSJCを重視していることを明らかにしましたが、医師が腫れていないと判断した関節でも超音波エコーによる診断ではかなりの確率で炎症が残っているというデータもあり、臨床診断にも不確実な側面があります。その点からも患者評価は重要だと思います。

 ある会合で日本リウマチ友の会の長谷川三枝子会長と同席したことがあります。その際、患者にとって何が重要かとの質問に、長谷川さんが「ともかく痛みをとってほしい」と発言していたのが印象的でした。RA診療に携わる医師は、長期的な治療戦略に立ちながら、患者さんの痛みにも敏感であるべきだと思います。
(談)

(論文解説:大西 淳子=医学ジャーナリスト、コメント聞き手:中沢 真也=日経メディカル別冊)