欧州リウマチ学会と米国リウマチ学会が提唱した関節リウマチの寛解基準において、他覚的所見に加えて医師の評価ではなく、患者全般評価を組み入れたことは議論を呼んでいます。ここでは、新寛解基準に主導的に加わったオーストリアVienna大学のDaniel Aletaha氏らの最新論文の概要を紹介します。併せてこの分野に詳しい慶應義塾大学リウマチ内科の金子祐子氏にこの論文のコメントを聞きました。ぜひご覧ください。

 関節リウマチ(RA)の疾患活動性を患者自身が評価する全般評価(PGA)と、評価者(医師)による全般評価(EGA)はしばしば食い違う。オーストリアVienna大学Daniel Aletaha氏のグループのPaul Studenic氏らは、RA患者の大規模観察コホートのデータベースに登録された情報を利用して、食い違いが何に由来するのかを調べた。その結果、患者は疼痛レベルをより重視し、医師は腫脹関節数(SJC)をより重視して全般評価を決定していることが明らかになった。著者らは、医療者が患者の痛みを過小評価している可能性を指摘する。詳細は、Arthritis & Rheumatism誌2012年9月号に報告された。

 先ごろ、米国リウマチ学会(ACR)と欧州リウマチ学会(EULAR)はRA治療の新たな寛解基準を共同で提唱し、Booleanベースの臨床試験向け暫定寛解基準として、「疼痛関節数(TJC)、腫脹関節数(SJC)、C反応性蛋白(CRP)、PGA(cm)のすべてが1以下」と定義した。しかし、他の評価指標が基準に達しているのにPGAのみが高値であるために寛解と判定されない患者が多い、という指摘があり、患者と医師の評価に差が生じる理由に対する関心が高まっていた。

 著者らは、PGAとEGAのスコアの差の程度と、差に関与する要因を明らかにするため、データベース登録患者について、メトトレキサート(MTX)によるRA治療を開始した時点(ベースライン)と、2〜7カ月後(平均4カ月)の再受診時のデータを取得した。年齢、性別、RA罹患歴、SJC、TJC、リウマトイド因子(RF)の有無、抗シトルリン化蛋白抗体(ACPAs)の有無、C反応性蛋白質(CRP)、赤血球沈降速度(ESR)、健康評価質問票の機能障害指数(HAQ-DI)、朝のこわばりの持続時間、患者の評価による疼痛レベル(100mm VASを使用)、そしてPGAとEGAに関する情報を抽出した。

 EGAは、患者の生理学的検査値を知らない状態で、医師が100mm VASを用いて評価した。PGAは、患者に「今日のRAの活動性はどのくらいですか」と質問し、100mm VASで回答を求めた。いずれも0mmは活動性なし、100mmは極めて活動性が高い状態を意味する。

 MTXの使用を開始していたRA患者は646人、再受診時のデータが得られたのは437人だった。646人中の80%が女性で、ACPA陽性者が80%、RF陽性者は68%、RA罹病歴は平均7.7年だった。

 単相関分析を実施したところ、PGAとの関係が最も強かったのは疼痛で、相関係数(r)は0.86(P<0.001)だった。一方、EGAとの関係が最も強かったのはSJCで、rは0.77(P<0.001)だった。再受診時のPGA、EGAについても同様の傾向が見られた。

図1 PGAの75.6%が疼痛で、EGAの60.9%がSJCで説明される(出典:Studenic P et al. Arthritis & Rheumatism; 64: 2814-23 )

 次に、単相関分析で相関係数のP値が0.001未満だった変数を組み入れて重回帰分析を行ったところ、PGAでは全体の77.4%が組み入れた変数により変動を説明可能で、そのうち疼痛が全体の75.6%、HAQスコアが同1.3%、SJCが同0.5%だった(図1)。

 EGAでは変動の66.7%が説明可能だった。そのうちSJCが全体の60.9%、疼痛が4.5%、HAQスコアが0.6%、CRPは0.4%、TJCは0.3%だった。

 次に、PGAとEGAの差(以下、PGA−EGA)について調べたところ、394人(61%)はEGAよりPGAが大きく、97人(15%)はPGAよりEGAが大きかった(いずれも5mm超の違いを「差がある」とみなした)。残りの155人(24%)ではPGAとEGAがほぼ一致(差が±5mm以内)した。

 PGA−EGAとの相関係数が有意なベースラインの変数は、TJC(r=0.15)、朝のこわばりの持続期間(r=0.21)、HAQスコア(r=0.26)、SJC(r=−0.39)、疼痛VAS(r=0.62)だった(いずれもP<0.001)。腫脹関節数のみは逆相関を示したが、これはSJCが高いほど、医師が患者よりも「より悪化している」という評価を下す傾向があることを意味する。

 さらに多変量解析を行ったところ、PGA−EGAに対する独立の説明変数は疼痛とSJCのみだった(いずれもP<0.001)。疼痛はPGA−EGAの36.8%を、SJCは28.5%を説明しており、2つの変数で全体の65%を説明できた。

図2 PGA−EGAと疼痛VASの関連を示す回帰直線(Studenic P et al. Arthritis & Rheumatism; 64: 2814-23のFigure2を基に作成 )

 図2、図3はPGA−EGAに対する疼痛とSJCの関連を示している。SJCが登録患者の平均値(3.2)の場合、疼痛VASが12mmの時にPGAとEGAは等しくなり、疼痛VASが1mm増加するとPGA−EGAは0.7大きくなる。また、疼痛VASが平均値(33.9mm)の場合、SJCが10の時にPGAとEGAは等しくなり、SJCが1つ増加すると、PGA−EGAは3減少すると推定された。

図3 PGA-EGAとSJCの関連を示す回帰直線(Studenic P et al. Arthritis & Rheumatism; 64: 2814-23のFigure2を基に作成 )

 著者らはさらに、RA治療期間中のPGAとEGAの変化の傾向の違いを調べた。ベースラインから再受診までのPGAとEGAの変化を、改善(5mm超の減少)、変化なし(変化が±5mm以内)、悪化(5mm超増加)として患者を層別化したところ、改善についてはPGAとEGAの変化の一致度は高く、PGAが改善した患者の63%でEGAも改善しており、EGAが改善した患者の70%はVGAが改善していた。しかし、悪化については一致度が低く、EGAが悪化した患者でPGAが悪化していたのは48%、PGAが悪化した患者でEGAも悪化していたのは37%だった。

 PGAの決定要因として患者が重視していたのは疼痛であり、医師がEGAスコアを決定する際に重視していたのはSJCだった。Studenic氏らは、「本研究により、医師と患者の『総合的な』評価が異なる視点に基づいていることが明らかになった」と強調する。

 慢性疾患においては医師と患者が共同で意思決定を行うことが大切とされる。本研究の結果は、RA診療において、患者にとっての優先事項と問題が何かを医師が把握する必要があることを示唆した。著者らは、「患者がPGAを書き込んだ時、なぜその位置にしたのかを理解することは重要だ」とまとめた。

 本研究の原題は、「Discrepancies between patients and physicians in their perceptions of rheumatoid arthritis disease activity」。概要は、こちらで閲覧できる。

【続く】