関節リウマチは発症すると長期間の治療を必要とし、痛みや関節変形などによる機能障害により、離職を余儀なくされたり、介護を要することも少なくない。そのため、患者や家族だけでなく社会的な経済負担も大きいことが知られている。関節リウマチに関する医療経済学的分析の第一人者である、東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター講師の田中栄一氏に話を聞いた。(談話まとめ:中沢 真也=日経メディカル別冊)

 10〜20年前には、関節リウマチ分野で治療コストの問題が大きく取り上げられることはありませんでした。新たな薬剤が登場し、治療戦略が進歩したことで、医療費が高騰したことが理由の1つでしょう。なかでも生物学的製剤の登場と普及の影響は大きいと思います。

 生物学的製剤だけでなく、メトトレキサートをはじめ、最近登場したタクロリムスなども高価な薬剤です。関節リウマチを抑える薬剤が次々に開発され、薬剤費は上昇傾向にあります。

 関節リウマチ治療の中心は抗リウマチ薬ですが、非ステロイド性抗炎症薬や骨粗鬆症薬、薬剤による胃腸障害を予防するためのプロトンポンプ阻害薬やH2受容体拮抗薬なども用いられます。これらの薬剤もそれぞれ進歩して薬価が上がってきており、総じて患者さんの負担が増えているのが現状です。

 また、関節リウマチの治療戦略は以前と比べ、より積極的になっています。関節リウマチ発症後、早期から積極的に疾患活動性を抑え込んだ方が予後が良いとする報告が相次いでいて、ある治療で効果がなければ別の治療に切り替えて最適な方針を探るようになっています。このようなアプローチも医療費の上昇に関与している可能性があります。

 こうした背景から、医療費の高騰に関心が集まっているのだと思います。以前は、お金が払えないから治療を受けられないという患者さんはほとんどいませんでしたが、最近では一定の割合で見かけます。コストを考えながら治療法を選択する時代になってきていると言ってよいでしょう。

 関節リウマチ患者は、日本では約70万人、世界的には人口の0.5〜1%とされていますが、生物学的製剤の中には薬剤全体の売り上げ金額で上位を占めている製品が複数あります。これらは国レベルで見ても大きな負担であり、各国で医療経済学的な検討が始まっています。しかし日本では、関節リウマチ分野についてのこれらの検討は、これまで皆無といってよい状況でした。