国立感染症研究所が繰り返し警告していた「麻疹の大流行」が現実味を帯びてきた。4月9日現在の集計によると、第14週までに全国から報告された患者数は253人となり、この時点で昨年1年間の232人を上回ってしまった。かつて経験した「麻疹パンデミック」の再来の恐れも出てきた。

 2009年以降の患者報告数の推移をみると、年間で732人、455人、443人、293人、232人と減少傾向を強めていた(図1)。しかし、2014年は、1月に73人、2月に75人、3月には89人と増加し、4月も6日までに16例の報告があり、昨年1年間の報告数を超えてしまった。例年、春から夏にかけて流行が拡大する麻疹だけに、4カ月弱で昨年1年間を上回ったことは驚きだった。

 ご記憶の人も多いと思うが、日本における麻疹は2007年に10〜20代を中心とした大流行を記録している。1年前の2006年の麻疹患者報告数は過去最低だった。全国約450カ所の基幹定点から報告された成人麻疹の患者報告数も2005〜2006年に大きく減少していた。しかし、2007年は、第21週をピークに、第1〜31週までに小児科定点当たり累積報告数は2307人(男1283、女1024)、基幹定点当たり報告数は1.69人(同772人、男性414人)となり、特に成人麻疹患者数が増加したという記録が残っている。2008年からは全数報告に切り替わったが、1年間で検査診断例が4200人、臨床診断例が6807人の合計1万1007人(2009年1月21日現在報告数)と高水準だった。

 その後は、麻疹撲滅の意識の高まりとともに、ワクチン接種を始め、全国的な感染拡大防止対策が功を奏して減少の一途をたどっていた。が、2014年は年初から報告件数が昨年同時期を上回って推移、第14週時点でついに昨年1年間の累積報告数を超えてしまった。

 WHOの推定では、世界の麻疹による死亡者数は2000年の75万人から2007年には19.7万人に減少していた。依然として流行が認められた日本を含むWHO西太平洋地域では、2012年を「麻疹排除」の目標年と定めていただけに、今回は異常事態に他ならない。

 なぜ麻疹は増加しているのか。

 2008年以降、報告数が減少したのは、やはりワクチンの効果が挙げられる。2008〜2012年度の5年間の経過措置として、予防接種法に基づく定期接種に第3期(中学1年相当年齢)と第4期(高校3年相当年齢)の2回目接種が追加された。その結果、接種対象者年齢層の20歳未満の患者数が大きく減少したという実績がある。

 しかし、2013年3月31日以降、3期、4期の追加が終了。これが、ワクチン接種率の低下の一因となり、今回の患者増を招いてしまったのではないのか。原因究明は引き続き検討されなければならないのだろうが、自治体によっては、公費負担制度を拡充するところも出ているのは心強いことだ。「予防接種で予防可能な疾患」(VPD)に含まれる麻疹。年齢にかかわらず命に関わる重篤な感染症の1つとされるだけに、麻疹排除の達成は焦眉の急だろう。遅くとも2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックまでには、成し遂げていたい日本の目標だ。

 流行の一因に海外で感染した人の国内への持ち込みが指摘されている。日本国内のことと考えるのではなく、WHO西太平洋地域を含む国々での感染予防を主導するという立場を意識した、日本の今後の積極的な感染防止への取り組みが求められている。

図1 麻疹の報告数の推移

■ 訂正
 4月18日に以下を訂正しました。
・記事中「自己負担でのワクチン接種への変更」とありましたが、誤りでしたので削除しました。また、下から2段落目にある「しかし、2013年3月31日以降、第2期(5〜7歳未満で小学校就学前の1年間)、3期、4期が公費負担対象外となり自己負担での接種となった」は、「しかし、2013年3月31日以降、3期、4期の追加が終了」に改めました。