今日は7月31日、夏真っ盛りの1日だ。例年、インフルエンザ関連で、この時期に注視するのは南半球の動向。しかし今夏は、警戒すべき対象が多岐にわたる。最も気を使うのが、今春に中国で確認された鳥インフルエンザA/H7N9ウイルス。米国のブ豚インフルエンザH3N2vも気がかりだ。もちろん忘れてはならないのは、鳥インフルエンザA/H5N1。インフルエンザを離れれば、MERSコロナウイルスの動向も注視せざるを得ない。

 専門家らの意見を聞く限り、やはり鳥インフルエンザA/H7N9ウイルスの動向が最大の注目点になる。その理由の1つが、最近発表された東京大学医科学研究所の河岡義裕氏らの研究成果にある。患者から分離されたH7N9ウイルスが、臨床で広く用いられているノイラミニダーゼ阻害剤に対して、感受性が低いことが動物実験で明らかになった。タミフルとラピアクタ、リレンザとイナビルにも感受性が低いウイルスが確認されたのだ。富山化学が申請中のファビピラビルが感受性があったことは救いだった。だが、ファビピラビルが今冬に間に合うのかどうかは未知数。となると、もし仮にノイラミニダーゼ阻害薬が効きにくいH7N9ウイルスが流行した場合、人類は初動対策の大いなる武器の1つを失った状態で、新たなパンデミックに挑まざるをえなくなる。

 ただ、今回確認されたウイルスは、4種類のノイラミニダーゼ阻害薬すべてに対して「感受性がない」わけではないのが救いだ。かつて、Aソ連型のタミフル耐性ウイルスが流行した際は、15歳以下の患者ではタミフルの効きが悪く解熱時間がリレンザよりも長くなったことが確認されている。同時に、15歳以上の患者ではタミフルの効果がリレンザとほとんど変わらないという結果だった。全く「感受性がない」ということを考えれば、「初動対策の大いなる武器の1つを失った状態」というのは言い過ぎになる。

 鳥インフルエンザA/H7N9ウイルスを最も注視する理由はほかにもある。それは、感染経路が解明されないまま今日に至っている点だ。ライフバード・マーケットを介して感染が広がったと考えられる事例は多い。しかし、すべてではないことが、鳥インフルエンザA/H7N9ウイルスへの警戒を高める理由になっている。現時点でヒト-ヒト感染は確認されていないが、否定するだけのエビデンスもないことが、鳥インフルエンザA/H7N9ウイルスの脅威となっている。

 米国の豚インフルエンザH3N2vは、2013年も流行が続いている。これまでに14例の感染例が報告されている。昨年夏に流行が拡大。農業フェアの開催とともに患者数が増えたことから、フェアでのブタとの接触が感染源とみられた。今夏は、7月27日までに14例の感染者が確認されている。豚とヒトとの親和性を考えると、鳥インフルエンザ以上に、ヒト感染の可能性が高いと考えられる。

 MERSコロナウイルスについては、限られたヒト-ヒト感染を否定しきれない事例があり、脅威は上記のウイルスより高いと言える。WHOも警戒レベルを上げており、注意深く監視している状況だ。

 現時点で考えておかなければならないのは、いかなる感染症であれ、迅速に把握し、その具体的な対応策を直ちに実行できるかどうかにかかっている。日本では、新型インフルエンザ等対策特別措置法が施行となり、国や県、市町村レベルでの対策が議論されている。まずできることは、非特異的な対応のための体制をしっかりと固めておくということではないだろうか。その礎になるには、個々人の危機意識の高さであるに違いない。